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エクソソームに関する最新の知見

No.4768 (2015年09月12日発行) P.65

大屋敷純子 (東京医科大学医学総合研究所教授)

大屋敷一馬 (東京医科大学血液内科学分野教授)

登録日: 2015-09-12

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

エクソソームについての最新の知見を,東京医科大学・大屋敷一馬先生にご教示頂きたいと思います。 (東京都 S)

【A】

エクソソームとは,細胞が分泌する50~100nmの小さな球形の小胞のことです(文献1) 。この小胞の中には蛋白質,mRNA,そしてマイクロRNAなどが入っており,情報を搭載した重要なナノカプセルとして体液中をめぐっています。さらに,この数年,マイクロRNAと疾患の関係について飛躍的に研究が進んだことより,エクソソーム研究が加速され,今日に至っています。
生理的反応でも病的反応でも,細胞の反応は何らかのシグナルが細胞に伝わって起こります。炎症であれば,サイトカインなどの液性因子によって反応が起こり,がんは癌細胞と隣接する間質細胞などとの接着によって発育進展していきます。
これらの従来の経路に加えて,最近,エクソソームを介した第三のシグナル伝達機構が明らかになってきました。すなわち,細胞から放出されたエクソソームが離れたところにある別の細胞に乗り移り,メッセンジャーとして遺伝情報などを伝えることによって,相手の細胞の挙動を変えてしまうのです。
では,エクソソームは実際にどんな疾患病態と関係しているのでしょうか。がんを例にとってみると,癌細胞から放出されたエクソソームは様々な形でがんの発育進展に関わっていることが報告されています。たとえば,エクソソーム内マイクロRNAが血管内皮細胞に作用して血管新生を起こさせたり(文献2) ,脳脊髄関門を破壊して脳転移を起こさせたり(文献3) ,がんにとって増殖しやすい環境をつくることが報告されています。そのほか,免疫応答,神経変性疾患,心疾患,妊娠などにおいてもエクソソームを介した情報伝達が重要な役割を担っていることが知られており(文献4) ,マイクロRNA以外にも蛋白質や脂質を介したメッセンジャー機能について研究が進んでいます。
このように,エクソソームは様々な種類の細胞から放出される「情報伝達用ナノカプセル」であることから,血液,尿,リキッドバイオプシーの材料などを検査することにより,疾病の早期診断のバイオマーカーとして,今後ますます注目されていくと考えられます。
中でもエクソソーム内のマイクロRNAは安定で,疾患特異的マイクロRNAとして検査が容易なことより,従来早期診断が難しいとされていた膵臓癌などでの実用化が期待されます。また,この疾患特異的マイクロRNAは診断のみならず,治療の新たな分子標的としても注目され,核酸医薬の開発が進んでいます。
なお,国内ではエクソソームという名称が一般化していますが,国外ではサイズのやや大きいものまで含めて細胞外小胞と呼ばれることが一般的です。
いずれにしても,これらのナノカプセルがシグナル伝達のメッセンジャーとして果たす役割は当初予想された以上に大きく,まだ十分に解明されていないバイオロジーの基礎的研究から臨床応用まで精力的な研究が展開されています。

【文献】


1) Thery C, et al:Nat Rev Immunol. 2002;2(8):569-79.
2) Umezu T, et al:Blood. 2014;124(25):3748-57.
3) 富永直臣, 他:血管医. 2015;16(2):25-32.
4) De Toro J, et al:Front Immunol. 2015;6:203.

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