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【識者の眼】「東京2020オリンピック大会後の国内の新型コロナの死亡者数を最少にするために」和田耕治

No.5069 (2021年06月19日発行) P.60

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-06-07

最終更新日: 2021-06-07

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東京2020オリンピック大会(以下、大会)の開催が現実味を帯びてきたが、国内の医療者から開催に向けて反対意見が出ている。この1年間をコロナと戦い続け、そしてワクチン接種を進めている状況の中では当然の意見だと思う。なぜなら、我々医療者は、市民の命を守るために適正な医療を行うことが使命だからである。

大会を開催しても、市民の命を守るための特措法上のリーダーは都道府県知事であることは変わらない。大会の最中においても、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言を必要に応じてタイムリーに政府に要請し、市民に介入や要請をするのは都道府県知事である。

都道府県知事は、できるだけ早く、大会を想定した期間中の対応計画や、起こりうる事態を市民にも示すべきである。英国株の威力を目の当たりにした大阪や、大型連休での人の動きと関連した沖縄や北海道の現在の状況は、当然また起こりえる。

大会の有無に関係なく、7月22日からは4連休であり、夏休みの始まりである。これまでも連休の前から、繁華街への人の流れの増加と関連するような感染の拡大が見られている。ここに向けて市民に行動の抑制をどうお願いするのか。

8月5日から8日には札幌でマラソンや競歩が開催される。チケットがなくても沿道等で観戦できるとなると、今まで以上に人流の増加が想定される。北海道は、現在極めて大変な状況にあるが、これらの日を迎えるにあたり、道内、そして道外との人流や飲食への対策を考えなければならない。

ワクチン接種を希望する高齢者の多くは7月末には接種が終わるだろうが、それでも問題は解決しない。40代から重症化リスクは上がっており、高齢者以外へのワクチン接種が進まないなかで経済活動が活発化すれば、40歳から64歳の重症例の増加が想定され、病床の逼迫は十分に起こりえる。

我々は、国内の新型コロナによる死亡者数を最少にすることを目標としてきたはずである。都道府県、市町村は大会期間であっても、市民に何を要請しなければならないかを示すべきである。例えば、飲食店の対応、都道府県を越える移動などについてである。

これらを考慮すると、大会に関連する人の動きなども決まってくるのではないだろうか。無観客、人の動きは最低限。地元選手を応援するパブリックビューイングなど人が集まる場面を最低限にすることも選択肢となる。大会が国内のコロナ対策の実施に影響し、国民の命が損なわれることは許されるべきではない。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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