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【識者の眼】「オリンピック・パラリンピックは誰のためのもの」尾﨑治夫

No.5068 (2021年06月12日発行) P.58

尾﨑治夫 (公益社団法人東京都医師会会長)

登録日: 2021-06-03

最終更新日: 2021-06-03

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今のような状況になる前、私はオリンピック・パラリンピック(以降、オリ・パラ)は平和の祭典で、開催都市のみならず、国民が開催を支持・祝福して、世界中から選ばれた一流のアスリートたちによって競われる4年に一度の唯一無二のスポーツ競技大会と考えていた。

だからこそ、4年前から当時の日本医師会の横倉義武会長と一緒になって、真夏の蒸し暑い日本で開かれるオリ・パラの医療サイドからの問題点(例えば、熱中症対策等)について、我々医療界が協力してオリ・パラが成功裡に終わるためにはどういう準備が必要とされるかなど、都知事、組織委員会、オリ・パラ大臣を定期的に訪問し、丁寧に説いて回っていたのである。

しかしながら、最近のオリ・パラ開催にまつわる様々な出来事を見ていると、IOCが終始主導して、誘致した開催都市とバックアップする国に対し、開催都市にどんなトラブルや災難が起ころうともお構いなく、何がなんでも開催にもっていこうとしている。IOCの都合で全てが動かされていく平和の祭典の仮面を被った、IOCのためのIOCによるスポーツの祭典ではないかと思うようになった。

「コロナ禍で、コロナに打ち勝った証として日本で開催することに意義がある」という言葉もなぜか虚しく聞こえてしまう。 国や都の明確な主導のもと、全ての国民が「日本はみんなで協力してコロナに打ち勝った」あるいは「打ち勝つことができそうだ」との思いを共有することができて、初めて打ち勝った証となるのではないか。

本当に、国民が支持するオリ・パラはもう無理なのか。このままでは無理だが、まだチャンスは皆無ではない。実効再生産数が0.5まで落ちれば、1カ月間でステージ2、1日の感染者数100を割ることは決して不可能なことではない。

今こそ最後のチャンスとして、人と人との接触を7割減らすことができる強力なメッセージ(例えば出勤者の7割減を強力に要請する等)を首相、都知事、組織委員会が一つになって発するべきである。結果的に感染者数が激減すれば、多くの国民も安心し、オリ・パラ開催を支持する人も増えていくのではないか。

時間はもうない。これがラストチャンスである。感染力の強いインド株が迫ってきている現在、今のままでは無観客開催も危ういであろう。

尾﨑治夫(公益社団法人東京都医師会会長)[新型コロナウイルス感染症]

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