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【識者の眼】「産業医が新型コロナワクチン接種の推進に向けてできること」和田耕治

No.5068 (2021年06月12日発行) P.61

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-06-02

最終更新日: 2021-06-02

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新型コロナワクチンの接種の推進に向けて職域での接種が話題になっている。「産業医がワクチン接種を」という話も出てきたが、政府からの問いは「どうしたら多くの労働者に接種ができるか」と筆者は理解している。

産業医の多くは非常勤であり、常勤であっても社内に診療所があるところは限られている。もし可能な企業があればぜひとも工夫して実施していただきたい。

一方で、直接の接種はできなくても、労働者に一日でも早く接種するために産業医、保健師や看護師、そして衛生管理者と連携したチームとして関わることはできる。外部の委託機関や提携できる医療機関との調整もあるだろう。

ワクチン接種の意義などについて情報を労働者に提供し、タイミングが来たら接種できるような気持ちにしておくことが重要である。筆者は、今年3月10日頃の1都3県3239人(20〜69歳)に調査をした。予防接種について、できるだけ早く接種したいは22%で、ある程度の人が接種され副反応がないことを確認してから接種したいは48%であった。しかし、あまり接種したいとは思わない・接種したくないが30%であり、若い年代では多くなる傾向が見られ、20代では33%、30代では37%であった。こうした気持ちを尊重しつつも、今からでも情報提供をしていくことは極めて重要と考えている(参考文献参照)。接種するかどうかは本人に委ねられてはいるが、企業として接種することを強制はしないまでも、産業医として、企業として推奨することは、筆者は重要であると考えている。

ワクチン接種が進みやすいように、接種後の休暇などの配慮について決めるなどもある。また人数が多い場合には接種の優先順位を考える必要がある。さらに、ワクチンを接種したらすぐに会食などをして良いわけではないことを周知し、接種が始まって副反応が社内で共有された際などは、きめ細やかな対応ができるようにしておきたい。接種について企業で記録をとるのかどうかも慎重に議論し、記録を集めるなら目的などを明確にする必要がある。

職場で接種は難しくても、できることはたくさんあり、産業医は次回の訪問を待たずとも、電話などでもぜひ企業の担当者と連携したい。

【参考文献】

▶ワクチン接種意思確認ツール(家庭・一般の方向け)

 [https://plaza.umin.ac.jp/~COVID19/core/Confirmation_tool_family.pdf]

▶ワクチン接種意思確認ツール(医療機関・高齢者施設向け)

 [https://plaza.umin.ac.jp/~COVID19/core/Confirmation_tool_hospital.pdf]

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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