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横川吸虫症(有害異形吸虫症を含む)[私の治療]

No.5067 (2021年06月05日発行) P.41

三木田 馨 (慶應義塾大学医学部感染症学教室専任講師)

登録日: 2021-06-07

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  • 横川吸虫(Metagonimus yokogawai)は,横川定が1911年に台湾でアユから本虫を最初に検出し,ヒト・イヌへの感染を明らかにした。桂田富士郎が翌年の1912年に新種の記載を行っている。横川吸虫の感染幼虫は,アユ,シラウオ,ウグイ,コイに寄生しているため,これらの淡水魚の生食や不完全調理での喫食により感染する。本虫は,日本,韓国,台湾,マレー半島,欧州などに広く分布しているが,わが国では河川領域に広く分布し,感染源としてはアユの生食,酢漬けやうるか(内臓の塩辛)およびシラウオの生食が重要である。本虫は小腸に寄生するため,多数寄生した場合は下痢,腹痛を呈する。特に小児では症状が強く,食欲異常,粘血便を呈することもある。少数寄生では無症状で経過する。

    有害異形吸虫(Heterophyes heterophyes nocens)は日本,韓国,中国,フィリピンなどに分布する横川吸虫と近縁の消化管寄生吸虫で,ボラ,ハゼなどの汽水魚に寄生する。わが国では,瀬戸内海や太平洋沿岸に分布する。横川吸虫と同様に,これら汽水魚の生食や不完全調理での喫食が感染源になる。本虫は横川吸虫と同様に小腸に寄生するため,感染すると下痢,腹痛の症状を呈する。

    ▶診断のポイント

    横川吸虫症は小腸に寄生することにより発症する。少数寄生では無症状であることが多いが,多数寄生では腹痛,下痢を呈する。上述したように,アユやシラウオなどの淡水魚の生食や不完全調理での喫食が原因であるため,食歴の聴取を注意深く行い,疑わしい場合は糞便の顕微鏡検査を行う。糞便中の虫卵検出により本症と診断できる。

    有害異形吸虫症も横川吸虫症と同様に,小腸に寄生することにより腹痛,下痢を呈する。したがって,横川吸虫症と同様に糞便の顕微鏡検査により虫卵を検出することで診断する。ボラやハゼなどの汽水魚の生食や不完全調理での喫食が原因であるため,食歴の聴取を注意深く行い,疑わしい場合は糞便中の虫卵を検出することにより診断できる。

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