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【識者の眼】「コロナ患者と現場のニーズに基づいた連携を」小倉和也

No.5065 (2021年05月22日発行) P.58

小倉和也 (NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2021-05-10

最終更新日: 2021-05-10

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新型コロナ感染者の自宅療養が急増している。第3波でも問題になったことだが、入院病床の確保を進めつつ、軽症では自宅療養か宿泊療養を開始しながら適切に病状を確認し、可能な治療と必要に応じた入院医療とを連携することが求められている。

日本在宅ケアアライアンスは今年に入り、自宅療養・宿泊療養を在宅ケアとみなし、在宅医療を行う医師や訪問看護師が、保健所や地域の多職種と連携してフォローできる体制確保の推進を行うよう国に求めた。これに応じ国は、事務連絡や手引きの改定を行い、オンライン診療なども活用し、必要な時だけ入院、安定した場合には自宅や宿泊療養に戻れるようスムーズに連携することで、限られた医療資源の有効利用を可能にする体制づくりが促された。

ここで大切なのは、患者や患者を支える当事者のニーズを中心に考え体制を構築することだ。これまで発熱外来や宿泊施設での対応を連携のもと行ってきたが、連携の課題はまだまだ多い。関係者は各々の視点から役割を果たそうとするものの、患者が困っている症状に誰がどう対応するか、そのために現場の関係者が必要な情報をどのように共有するか、本人や家族の不安にどう答えるかなど、中心となるべきニーズを見落としそうになりハッとすることがある。

在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワークなどが普及のための研修を提供している「医療保健福祉分野の多職種連携コンピテンシー」においては、「患者・利用者・家族・コミュニティー中心」を共通目標としている。この危機において行政と医療保健福祉分野の事業所や専門職が一丸となった連携が重要であることは当然だが、その際同じ方向を向いて協力するためには、今一度この共通目標を確認することが重要だ。各専門分野、担当業務に一生懸命になればなるほど、思いがけず目指すべき方向を見失いがちになることがあるからだ。

世界的で長きにわたるパンデミックに対峙するにあたり、包括的かつ長期的な視野に立ちつつも、一人一人の患者のニーズは患者本人に、各地域のニーズは地域の現場に聴くことを忘れてはならない。それぞれの立場で真摯に現実に向き合い、当事者とともに互いに情報と思いを共有しながら知恵を出し助け合うことでしか、この現状を打破する道は開かれない。このことに立ち返り、コロナ後においても、この共通理解のもとで地域の連携と共生のための取り組みを続けて行きたい。

【参考文献】

▶医療保健福祉分野の多職種連携コンピテンシー

 [http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/mirai_iryo/pdf/Interprofessional_Competency_in_Japan_ver15.pdf] 

小倉和也(NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[新型コロナウイルス感染症]

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