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【識者の眼】「ミカンとメロン」神野正博

No.5066 (2021年05月29日発行) P.58

神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)

登録日: 2021-04-28

最終更新日: 2021-04-28

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いかに病院機能分化の時代とはいえ、また地域医療支援病院の看板を出しているとはいえ、病院の外来患者が減ると、病院管理者としてはとても不安になってしまう。入院患者の確保も外来を経由したものが多数である以上、その分母たる外来患者数が気になってしまうのだ。

その不安が、新型コロナウイルス感染拡大とともに一気に現実のものとなった。昨年の5月を底に外来患者が減少した。そしてその動向は、感染の波とも関連しながら、年度末まで全国の病院を襲ったのだ。

ステイ・ホームは外傷患者を減らし、マスク・手洗い・うがいといった感染防止の原則は感染症患者を極端に減らした。そして、それ以上に、「病院へ行ってうつるくらいなら病院へ行かない」「自分の慢性疾患は病院へ行かなくともコントロール可能だ」「入院しても家族と会えないのならば、在宅で療養したい」などと、人々の価値観が大きく変わったことが大きいのかもしれない。

患者数が減って顔色が蒼白となった病院管理者は病院の収支を眺めて、また目を白黒させる。経営上の影響は大きいものの、外来患者の減少の割には外来収入が落ちない、あるいは入院患者の減少・救急患者の減少の割には入院収入が落ちないのだ。

それをある経済学者に話したところ、彼から「先生のところは、ミカンとメロンを売っていたのでしょ。ミカンが売れなくなっただけで、メロンは売れているんだよ」と言う。単に投薬のみを求める、血圧や血糖値を測って帰る患者が減ったのだ。あるいは、様態観察入院の救急患者が減ったのだ。一方で、感染蔓延の中でも、抗がん剤治療、放射線治療、免疫治療など、どうしても来なくてはならない単価の高い患者は恐る恐る病院に来た。救急部門には、念のためではない真に集中的な治療が必要な重篤な患者が搬送され、入院したのだった。

医療体制の機能分化の議論がなされて久しい。しかし、何時までも大病院の外来はごった返し、3時間待ちの3分診療だった。今回のパンデミックが、まさに外圧で病院医療のあり方を変えようとしていることに、我々は気付く必要があるようだ。

神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[新型コロナウイルス感染症][病院機能分化]

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