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【識者の眼】「COVID-19ワクチンと抗体検査」栁原克紀

No.5065 (2021年05月22日発行) P.58

栁原克紀 (長崎大学病院検査部教授・部長)

登録日: 2021-04-21

最終更新日: 2021-04-21

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るっている。世界保健機関(WHO)は2021年4月第2週の世界的な新型コロナウイルスの新規感染件数が520万件と、パンデミック(世界的大流行)開始以来最悪になったと発表した。わが国でも感染力の強いN501Y変異を持つイギリス型変異株の感染者が急増しており、医療体制はひっ迫している。そのような中、ゲームチェンジャーとして期待されるのがワクチンである。RNAワクチン、ウイルスベクターワクチン、DNAワクチンならびに抗原提示細胞ワクチンなど様々なプラットフォームで開発が進められている。現在先行して使用されているのが、RNAワクチン(ファイザー/ビオンティック、モデルナ)とウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ)である。それぞれの特徴はあるもののパンデミック終息のカギを握るのは間違いない。

現在、COVID-19の診断には、遺伝子検査(核酸検査)と抗原検査が用いられており、その使い分けに関してもある程度浸透してきた。一方、抗体検査の役割は明確でない。IgM抗体およびIgG抗体はいずれも発症早期には陽性とならない可能性が高く、抗体検査では発症早期の患者を診断することはできない。発症してから時間が経過したものではIgG抗体の陽性率が非常に高いため、既感染の確認には有用である。抗体検査を行うことによって、その地区や施設の疫学を把握することができる。今後はワクチン接種を進めながら、個人免疫・集団免疫の動向を見極める必要がある。その評価に期待されるのが抗体検査である。

抗体検査も開発が進み、ワクチンに用いられるスパイク蛋白とウイルス内部のヌクレオカプシド蛋白に対する抗体が測定できるようになった。感染者は両者が陽性になるが、感染歴がないワクチン接種者は、スパイク蛋白抗体陽性、ヌクレオカプシド蛋白抗体が陰性になる。全員の抗体測定はできないが、年齢、性別、基礎疾患などで分け、抗体価を検査することで、どれくらい免疫がついたかを予測することも可能である。既感染者や若年者は一回のワクチン接種で十分かもしれないし、免疫不全者は追加接種が必要かもしれない。このようなデータを元に、ワクチンの科学的な接種計画が策定されることが望ましい。

栁原克紀(長崎大学病院検査部教授・部長)[新型コロナウイルス感染症][敗血症の最新トピックス⑯]

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