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【識者の眼】「わが国の病院病棟の築年数」岡本悦司

No.5059 (2021年04月10日発行) P.66

岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部長)

登録日: 2021-04-02

最終更新日: 2021-04-02

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はるか昔、イギリスのオックスフォード大学を訪問した時、キャンパスの最も古い建物は築後700年で、しかもその建物が未だ使われていることに驚かされた。堅牢なコンクリート建築はメンテさえしっかりすれば半永久的に使えるという。しかし、病院建築の専門家によると、急速な医学医療の進歩についてゆくためには、病院建築の寿命は50年くらいが限界なのだそうだ。とすれば、病院オーナーは50年くらいのサイクルで建築費を積み立ててゆかねばならない。公的な資金援助も必要となろう。

2014年からスタートした病床機能報告も、ようやく2019年データが各都道府県サイトで公表されるようになってきた。7300余り(精神科病院除く)の一般病院のExcelファイルをダウンロードするのも一苦労だが、6年目を迎えて、調査項目も充実してきているのがわかる。2019年データで目をひくのは病棟ごとの建築年と建物構造が項目に追加されたことである。

わが国の病院病棟の築年数の分布はどうだろうか? 本稿執筆時点でデータが公開されている29道府県、4101病院、1万6113病棟(うち築年数が記入されていたのは8099病棟)の分布はの通り。概してわが国の病院病棟は新しいものが多く、50年を超える1969年以前築のものは8099病棟中152病棟、率にして1.9%にすぎない(最古は1935年築)。また分布にも明らかな波がみられ、1987〜89年にピークがあり、その後1993年には急減した。昭和末期のバブル景気の時期であり、病院数が1万を超えたのもこの頃だった。もうひとつの要因として医療計画導入に伴う病床規制も無視できない。そう、規制前の「駆け込み増床」だ。これら「駆け込み増床」病棟が改築を迎える20年くらい先、膨大な改築費用をいかに捻出するかが、わが国医療政策の新たな試練になるかもしれない。

岡本悦司(福知山公立大学地域経営学部長)[病床機能報告]

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