株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「ウィズコロナの子どもの問題をアフターコロナの大人の問題にしないために」石﨑優子

No.5063 (2021年05月08日発行) P.94

石﨑優子 (関西医科大学小児科学講座准教授)

登録日: 2021-03-31

最終更新日: 2021-03-31

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本国内で新型コロナウイルス感染症の流行が始まり早1年が経過した。わが国でも2020年4〜5月の緊急事態宣言前後の一斉休校とその後も続く外出の自粛、学校行事の縮小、クラスターが発生した学校での休校など、子どもたちの生活は大きく変わったと考えられる。そのような変化の下、筆者を含めてこの冬、インフルエンザ患者に一度も遭遇していない小児科医が大勢いる。その半面、筆者の元に訪れる肥満、便秘、睡眠障害、摂食障害、不登校が急増していると感じている。これは海外でも同様の報告が見られる。

都市封鎖、休校、自粛生活により、まずは運動不足が起こる。そして偏った食事、菓子類や糖分の多い飲料の過剰摂取により肥満や便秘が起こる。実際に糖尿病を発症した子どももいる。そしてそれは子どもたちの置かれている家庭環境を反映している。休校で学校から切り離された場合、感染拡大下で子どもの健康は、その家庭が子どもの食事や運動に気配りができるか否かにかかってくるのである。半面、自宅にいて動かないことで摂取したカロリーを消費できないことを恐れて極端な減食に向かう子どもたちも増えている。自宅にいることで外部の刺激によって気を紛らわせることが難しく、食と対峙してしまう。またインターネット、ゲームに没頭するだけではなく、オンライン授業も含めて否応なく画像を見る時間(screen time)が増加する。それにより、子どもの睡眠が損なわれると、夜尿症や便秘の悪化にもつながる。

休校や自粛が子どもの心身に与える影響は実に様々であるが、共通して言えることは、これらの問題は子どもの現在のみならず、将来にわたって子どもの心身の健康に影響を及ぼしうるという点である。小児肥満しかり、摂食障害しかり。このように考えると今子どもたちに起こっている問題は、ウィズコロナの子どもの問題であるだけではない。私たちは10年後、20年後のアフターコロナの若年成人に起こる問題を予測し早期対応を目指して、見守り続けなければならない。

石﨑優子(関西医科大学小児科学講座准教授)[新型コロナウイルス感染症]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top