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非機能性下垂体腺腫[私の治療]

No.5057 (2021年03月27日発行) P.40

田原重志 (日本医科大学脳神経外科学教室准教授)

登録日: 2021-03-26

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  • 下垂体腺腫は下垂体前葉由来の腫瘍で,そのほとんどが良性腫瘍である。最新の日本脳神経外科学会の登録によると,2016~17年度の手術症例は原発性脳腫瘍の17.2%を占め3番目に多い1)。下垂体腺腫は,腫瘍が不適切にホルモンを分泌することにより特徴的な臨床症状を呈する機能性腺腫(functioning adenoma:FA)と,それ以外の非機能性下垂体腺腫(non-functioning adenoma:NFA)にわけられる。わが国におけるDPCデータからの報告では,2010~16年に1万6253例の下垂体手術が施行されたが,その中でNFAが66.9%と最多であった2)。本稿では,下垂体腺腫の中で最も頻度の高いNFAにおける診断と治療法について解説する。

    ▶ 診断のポイント

    朝空腹時の下垂体前葉ホルモンおよびその標的ホルモンを測定することにより,NFAか否かがある程度はっきりする。また,下垂体中心の造影MRI(冠状断,矢状断)を行い,腫瘍の造影パターンや正常下垂体の位置を確認することで,他の下垂体病変との鑑別が可能である。さらに腫瘍の進展方向を評価し,治療戦略を決定する。

    ▶ 私の治療方針・処方の組み立て方

    下垂体部腫瘍が疑われる場合,下垂体前葉ホルモンの基礎値およびコルチゾール,free T4,IGF-I,テストステロン(男性),E2(女性)を測定する。この際,下垂体前葉ホルモンには日内変動があるため,朝空腹時に採血することが重要である。この結果,下垂体機能低下症が疑われる場合には負荷試験(下垂体前葉ホルモンの分泌刺激試験)を考慮するが,腫瘍が大型で視神経を圧迫している場合には,負荷試験によって下垂体卒中のリスクがあるため,注意が必要である。一方,身体所見や臨床症状が乏しくてもFAの可能性もあるため,厳密な内分泌検査が必要である。同時に下垂体中心の造影MRI(冠状断,矢状断)を行う。下垂体部には多くの腫瘍性病変や炎症性病変が存在するため,造影検査で下垂体腺腫以外の疾患を鑑別することは重要である。また,正常下垂体の位置や海綿静脈洞浸潤,あるいはトルコ鞍上部の腫瘍の大きさや進展方向を評価しておく。これによって手術戦略が異なる。画像上腫瘍が視神経を圧迫している場合は,眼科で視力視野の評価を行う。この際,視野検査は一般的に静的視野検査(ハンフリー)の感度が高い。

    また近年,慢性頭痛,めまい,頭部外傷,検診など下垂体腫瘍による症候以外の理由で施行された画像検査で偶然発見された下垂体部腫瘍が注目されている。これらは偶発的下垂体腫瘍(インシデンタローマ)と呼ばれ,日本内分泌学会および日本脳ドック学会から診断治療指針が示されている3)

    NFAの治療の第一選択は手術である。現在手術方法は内視鏡を用いた経鼻的手術(endoscopic transsphenoidal surgery:eTSS)が主流である。腫瘍が視神経・視交叉を圧迫し,視機能障害が明らかな場合は手術適応となる。また,眼科的な検査で視機能障害はないものの,画像上視神経・視交叉を圧迫している場合は相対的手術適応と考える。すなわち,年齢・合併症・全身状態などに配慮し,十分なインフォームドコンセントを行った上で,患者が手術を希望する場合には手術を実施する。

    トルコ鞍上部前方に腫瘍が進展している場合には,前頭蓋底経由での経鼻的手術(拡大eTSS)が選択される。腫瘍が鞍上部に広く進展し,経鼻的手術単独では摘出が困難な症例は開頭術(transcranial surgery:TCS)が選択される。最近では,このような症例に経鼻開頭同時手術が行われることもある。大型の腫瘍の場合,合併症回避の目的で視覚誘発電位(VEP)や眼球運動神経のモニタリングを行う。また,再手術の場合はナビゲーションシステムがあるとよい。術後残存腫瘍がある場合は,半年ごとにMRIをフォローし,残存腫瘍の増大がある場合は,放射線治療を考慮する。放射線治療はガンマナイフ,サイバーナイフなど定位放射線治療が主に選択される。

    一方,発見時無症候で画像上腫瘍が視神経・視交叉に接していない場合には定期的な経過観察とする。経過観察としては当初3カ月後およびその6カ月後とし,以後は1年ごとにMRIとホルモン値を測定する。腫瘍の増大傾向がある場合には手術療法を考慮し,進行性の下垂体機能低下症がある場合にも手術を検討する。

    また,下垂体機能低下症がある場合には,適切な補充療法を行うことが必要である。ただ,成長ホルモンの補充に関しては,腫瘍の存在する状況においては補充による有益性がその危険性(腫瘍の増大など)を上回る場合に考慮される(ただし,成長ホルモン補充による腫瘍増大のエビデンスはない)。

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