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【識者の眼】「アジア国立がんセンター協議会(ANCCA)の活動」松田智大

No.5051 (2021年02月13日発行) P.61

松田智大 (国立がん研究センター企画戦略局国際戦略室長)

登録日: 2021-01-25

最終更新日: 2021-01-25

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アジア国立がんセンター協議会(Asian National Cancer Centers Alliance:ANCCA)は、世界におけるがん罹患の半分を占めるアジア諸国が直面する負担に対処するために、2005年に、日本の国立がん研究センターと韓国国立がんセンターの呼びかけにより9つの国の国立がんセンターが集まり、設立された(http://ancca.asia/)。設立以降、2年に一度の総会に各センターのトップが集まるのみで、目立った動きはなかったものの、2018年にインドネシアのダルマイスがんセンターが主催した総会において、せっかくの組織を活性化すべく提案がなされた。①規定類を整備すること、②各国で顔の見える関係となること、③共同事業を立ち上げること、である。①においては、「アジア」の範囲や、メンバーの要件などを定め、ANCCAのビジョンとミッションを文章として改めてまとめた。②では、実際に活動ができる事務窓口担当者を各施設で定めて、2カ月に一度ほどのリモート会議で活発に交流している。最も重要な③は、「国立がんセンター」の立場の特色を活かし、がん対策での協力や専門家教育に関わる事業を進めることとした。本誌No.5025に掲載した本連載「アジアのがんセンターでのCOVID-19対策」は、その成果の一つである。現在は国際がん研究機関(IARC)と協働し、アジアでのがん対策共通アジェンダの提唱を進めている。

2020年は、ベトナム・ハノイにおいて、総会が開催される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、延期となった。その代替として、10月29日には2回目となるリモートでの総長会議を開催し、17カ国から関係者合わせ約50名が参加した。

本連載「アジアの癌医療研究連携」の連載を終えるにあたり、連携ほど「言うは易く行うは難し」なことはないと痛感している。内部でも派閥ができ、連携体制にほど遠い組織は多い。特にこのアジア圏で多様性を認めつつ、協調するのに求められているのは、専門性や技術の質の高さではなく、関係者の気持ちを慮り、リソースを配置できる人材かもしれない。

松田智大(国立がん研究センター企画戦略局国際戦略室長)[アジアの癌医療研究連携]

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