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【識者の眼】「慶應義塾大学と東京歯科大学の合併の意義とは」槻木恵一

No.5053 (2021年02月27日発行) P.62

槻木恵一 (神奈川歯科大学副学長)

登録日: 2021-01-19

最終更新日: 2021-01-25

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慶應義塾大学と東京歯科大学の合併が大きな話題となっている。しかし、今回の合併は、以前行われた慶應義塾大学と共立薬科大学との合併発表に酷似していることは、あまり報道されていない。私は、慶應義塾大学という個性と東京歯科大学という個性の融合であり、その融合に関するプレスリリースは、高い独自性や創造性がある内容と考えていた。しかし、以前の共立薬科大学との合併に関する内容と共通しているところが多々あることに気がつき驚いた。以下に6つの共通点を指摘する。

1)発表のタイミングが同じ11月である。双方の大学の理事会および評議員会の機関決定から間髪入れない用意周到さである。

2)プレスリリースが「合併協議にはいる」という共通している文言。

3)創設に関与する人物が慶應義塾大学の出身者であり回帰性を強調している点。

4)単科大学であり少子化への対応であるという理由。

5)長期的視点で教育研究レベルの向上が図れるという理由。

6)法人運営上特に現段階では問題がないのに、なぜ今なのかと思われている現状。

この様に、今回の合併は、慶應義塾大学の以前の合併経験をレールにしたものであることがわかり、慶應義塾大学のリードは明らかである。

東京歯科大学は、日本で初めての歯科医学の教育機関であり、歯科医学史上において東京歯科大学が看板を下ろすことは、極めて重大な歴史的一面である。私が合併に対して独自性・創造性を求めた理由は、そこにある。今回の発表が先例を踏襲したものであることを知ると、極めて無味乾燥であり虚無感が残る。

しかし、これまでの東京歯科大学が連綿とつないできた歯科医療や歯科医学への貢献が、慶應義塾大学との合併で指数関数的に高まり、歯科会の歴史の転換点になる可能性もあるかもしれない。共立薬科大学は慶應義塾大学との合併をプレスリリースした後の入試で、210人の募集人員に対して5000人以上の志願者が応募したそうである。しかし、日本での歯科医師を目指す受験生は2020年で約1万1000人であり減少を続けている。いま直面している歯科医師への志願者数の減少に対して、今回の合併によりブランド化が進み志願者数の増加に転じれば、2つの大学の合併に留まらず歯科会に大きな貢献となることは疑いない。今後の合併協議を注視していき、歯科界における意義を長期的に見守りたい。

槻木恵一(神奈川歯科大学副学長)[歯科]

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