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【識者の眼】「薬価の毎年改定の課題(2)─毎年改定はどうあるべきか」坂巻弘之

No.5053 (2021年02月27日発行) P.57

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2021-01-15

最終更新日: 2021-01-15

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2021年に初めての中間年改定が実施されることになったが、毎年改定の是非については、導入決定前から①薬価の大幅な下落と企業経営への影響と安定供給への不安、②調査の医療機関・卸等への負担、③医療経営への影響、④2年に1回の診療報酬への振り替えの原資が失われることへの懸念、などの問題指摘があった。

企業経営等への懸念については、前回(No.5049)述べたように、今後の検証が必要な事項である。調査の負担は確かにあるが、取引情報の電子化が進んでおり、技術的には可能である。ドイツでは電子化された取引価格データが2週間ごと更新されており償還価格に反映されている。医療経営への影響については、薬価差益が医療機関・薬局の経営原資となっていることでの診療報酬の問題に加え、納入価格を妥結・契約せず納品する流通慣行など、別の議論が必要である。

診療報酬への原資の議論については、かつては、薬価改定による医療費削減分が診療報酬「本体」の改定(引き上げ)に振り替えられていたとされるが、2013年の財政制度審議会で否定されたことになっている。いずれにしても、市場実勢価格の引き下げを国民に還元するという理念からは、毎年の改定は否定されるものではなかろう。

一方で、対象品目選定の課題が明らかになった。市場実勢価格と薬価との「乖離」の大きな品目を改定の対象とすることが前提ではあったが、価格差(乖離額)か、割合(乖離率)かで、立場による意見の違いがみられた。乖離額であれば、薬価の高い新薬が対象になることに加え、医療機関・薬局への影響も多く、新薬メーカー、医療提供側が歩調をそろえて乖離額への反対の立場をとった。結果的には、乖離率での改定となり、乖離率5%を超える品目が対象となった。対象品目についても、薬価調査は全品目で可能であるし、薬価差益を国民に還元するという理念からは、より財政影響の大きい高額製品を含めるべきであると考える。中間年改定においては、安定供給等への影響を鑑み、薬価調査結果をどの程度反映させるかの議論はあったとしても、対象品目としては、全品目とすることもありうるのではないだろうか。

薬価改定は、市場メカニズムに基づき価格を引き下げるという優れた側面を持った仕組みであり、持続可能な社会保障制度を維持するためにも必要な機能である。立場による利害を超えた薬価改定の仕組みの議論が望まれる。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

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