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【識者の眼】「新興感染症対策と医師の時間外労働規制」小林利彦

No.5049 (2021年01月30日発行) P.53

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2021-01-08

最終更新日: 2021-01-08

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2020年初頭から医療界は新型コロナウイルス感染症の流行に振り回されてきた。2019年9月に再編・統合の検討が必要だとした424の公立・公的病院に対して、国は感染症対応への配慮などから報告時期を無期延期とした一方で、病床削減に向けた減反政策とも言える「病床機能再編支援事業」を予算化した。また、感染症の遷延は医療計画の内容等にも大きな影響を及ぼし、2024年からの次期医療計画では、いわゆる5疾病5事業に「新興感染症対策」が6事業目に追加されることになった。その議論の中では、感染症対策は「疾病」でなく「災害」扱いにすべきとの意見が多かった。

2024年といえば、2018年に成立した「働き方改革関連法」で先延ばしされている「医師の時間外労働規制」の開始時期とも一致する。今のところ、医師の時間外労働規制の開始時期が延長される気配はなく、むしろ、ここにきて加速している感もある。実際、2020年12月22日に「医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ」が公表され、次年度に向けた法案の提出準備は完了したように思える。「中間とりまとめ」の具体的内容や法整備の影響等は本コラムで今後徐々に紹介していくが、今回は目の前の感染症対策で長時間労働を余儀なくされている医療従事者向けに、災害対応に近い現況での時間外労働について少しコメントしたい。

労働基準法では、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を基本とし(第32条)、それを超えて労働させるには労使間で協定を結び労働基準監督署に届けることが必要である(第36条)。2024年4月からは、病院の機能や個々の医師の特殊性などから、時間外労働の上限が年間960時間(A水準)と1860時間(B・C水準)に定められるが、災害時等の労働に関しては従前どおり労働基準法第33条が適用される。すなわち、「災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合」には、使用者は行政官庁の許可を受けて36協定には関係なく労働を命じることができる。国の通知文でも、新型コロナウイルス感染症に感染した患者を治療する場合は、第33条の適用が「必要な限度の範囲内において」可能だとしている。

とはいえ、報道にもあったように、人員確保が困難だという理由で、新型コロナウイルスに感染した医療専門職を働かせるという事案などがあってはいけない。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[医師の働き方改革]

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