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【識者の眼】「真の費用対効果を考える(各論その8)〜EQ-5Dについて」三宅信昌

No.5044 (2020年12月26日発行) P.64

三宅信昌 (三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)

登録日: 2020-12-11

最終更新日: 2020-12-11

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今回は、費用対効用分析の数値として最も重要な役割を果たすEuroQOL(ユーロコル)について解説いたします。

患者がいかに幸せな生活を送れたかを数値として表現することによって、種々の疾患で行われた医療行為の価値を比較検討することができます。生活の質と生存年数を掛け合わせた状態はQALY(quality adjusted life years)、その数値は効用値(utility)、世界各国の保険医療機関の75%以上で使用されているのは、EuroQOLです。EuroQOLは1990年に公表され、現在世界102言語で使われています。日本語版EuroQOLは1997年に完成し公式認定されました。その調査項目は5項目(①移動の距離、②身の回りの管理、③ふだんの生活、④痛み/不快感、⑤不安/ふさぎ込み)で、EQ-5D(EuroQOL-5-demensions)と称されています。患者のADLだけでなく、精神的な項目も含まれています。各調査項目を3段階に分け、患者が記入する形式をとっていますが、近年世界各国では、疾患による生活レベルが高い位置で有意差をもった比較検討を行うため、5段階評価を採用する傾向にあります。これはEQ-5D-5L(EuroQOL 5 dimensions 5 levels)と言われています。

効用値換算表の説明を致します。EQ-5D-5Lの第1項目の「移動の距離」は、□問題はない=0、□歩き回るのに少し問題がある=0.0639、□歩き回るのに中程度の問題がある=0.1126、□歩き回るのにかなり問題がある=0.1790、□歩き回ることができない=0.2429で、患者は各々の項目に□を入れます。そして残りの4項目も同様に□を入れ、換算数値は項目ごとに異なっていますが、5項目分を足し算致します。そして、その合計数値を1から引くことよって効用値となります。全く健康に1年間生きた場合の効用値は1.0であり、亡くなった場合は0.0となりますが、その中間のQOLの程度は下4桁の細やかな数字で表現されることになります。

当然ながら臨床的数字は各疾患で異なるため、その医療行為の価値の比較は医療経済学的にはできません。しかし共通項目としての効用値を使用することによって、患者の生活がいかに幸せになったかを比較検討ができます。その重要性をご理解下さい。

三宅信昌(三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)[診療報酬関連]

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