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【識者の眼】「脳梗塞の再生医療への期待」峰松一夫

No.5043 (2020年12月19日発行) P.60

峰松一夫 (公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)

登録日: 2020-12-02

最終更新日: 2020-12-02

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脳梗塞治療のブレークスルーとして、血栓溶解療法(1995年〜)、機械的血栓回収療法(2015年〜)の2つが挙げられる。いずれも、脳血管閉塞後早期の血流再開により臨床転帰改善を図るもので、グレードA(行うように強く勧められる)の治療法である。歴史的にはしかし、動物実験で治療効果が示されながら、臨床試験で失敗したものの方が多い。代表例は脳保護薬である。臨床治験で一定の治療効果が示された脳保護薬は、わが国で承認された抗酸化薬エダラボンのみであり(グレードB:行うように勧められる)、世界的な評価が確立した脳保護薬療法はない。筆者は、これまで多くの急性期治療法開発に関与してきたが、成功に至ったのはごくわずかであった。

最近、「脳梗塞の再生医療」が注目されている。再生医療とは、ヒトの細胞から臓器や組織を作り、病気を治す医療である。骨髄などの間葉系幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた再生医療が研究されているが、免疫拒絶反応が少ない間葉系幹細胞、及び間葉系幹細胞が分泌するサイトカインを用いた治療は、実用化が近いと期待されている。

脳梗塞の再生医療として、わが国では複数の臨床試験が進行中である。大半は急性期から亜急性期の脳梗塞を対象とし、自家もしくは他家骨髄由来、他家歯髄由来幹細胞が用いられ、脳内直接投与もしくは経静脈投与が行われている。筆者も、とある幹細胞製品を用いた治験(Ⅱ/Ⅲ相の無作為ランダム化比較試験)に関わっている。目標症例数到達まであと数カ月であり、試験結果は2022年初頭には公表される予定である。こうした再生医療は、数年単位の長期的影響を評価する必要もあり、同時に行われるリハビリテーション技術も大きな研究課題である。脳梗塞の再生医療の確立には、今後10年〜20年単位の時間が必要かもしれないが、本療法が第3のブレークスルーとなることを期待している。

峰松一夫(公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)[脳卒中]

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