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舌根部甲状舌管囊胞

No.5039 (2020年11月21日発行) P.52

春松敏夫 (鹿児島大学小児外科)

家入里志 (鹿児島大学小児外科教授)

登録日: 2020-11-21

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 【舌根部囊胞は重篤な呼吸障害を起こしうる】

小児の前頸部囊胞といえば甲状舌管囊胞であるが,これが舌根部に生じると重篤な呼吸障害を生じることがある。

甲状舌管囊胞の大部分は5歳以下に前頸部正中の無痛性腫瘤としてみられる。約85%は舌骨周囲の正中線上にみられるが,0.5~2%は舌根部に生じる。舌根部甲状舌管囊胞(以下,本症)の多くは新生児期や乳児期早期に吸気性喘鳴で発見される1)。先天性喘鳴の約15%に本症を含む舌根部囊胞を認めており,早期診断・治療が重要である。

本症の吸気性喘鳴は囊胞が喉頭蓋を圧排することと,囊胞自体が中咽頭を閉塞することで生じる。喘鳴は仰臥位や入眠時に増悪し,重篤な例では突然死の原因となる。吸気性喘鳴と,それに伴い喉頭蓋の動きや鼻呼吸が障害されることによる哺乳不良,体重増加不良もみられる。

先天性喘鳴を認め,本症を疑う場合は側面X線検査が有用である。筆者らは,側面X線で本症の87.5%に舌根部腫瘤を指摘できたことを報告している2)。また,本症の診断には喉頭ファイバーが有用である。異所性甲状腺との鑑別を超音波やCTで行い,囊胞性病変であれば囊胞開窓術に加え,囊胞底と周囲舌粘膜を縫縮する造袋術を付加することで再発予防になる。

本症は先天性喘鳴を認め突然死の原因にもなりうるため,側面X線検査や喉頭ファイバーを迅速に行い,診断されれば速やかな手術が必要である。

【文献】

1) 春松敏夫, 他:日小外会誌. 2014;50(4):798-801.

2) Harumatsu T, et al:J Pediatr Surg. 2019;54(4): 766-70.

【解説】

春松敏夫, 家入里志 鹿児島大学小児外科 *教授

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