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骨髄腫腎[私の治療]

No.5038 (2020年11月14日発行) P.42

金子修三 (筑波大学医学医療系腎臓内科学講師)

登録日: 2020-11-13

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  • 多発性骨髄腫は形質細胞由来の血液系悪性腫瘍で,腫瘍化形質細胞が産生する単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)が腎臓に負荷されると,種々の障害をきたす。骨髄腫腎は,別名,円柱腎症(cast nephropathy)と言い,糸球体で濾過された過剰な遊離軽鎖がTamm-Horsfall蛋白(太い上行脚で産生される糖蛋白)と結合し,遠位尿細管内で円柱を形成し,尿細管閉塞と間質性腎炎により急性腎障害を呈する病態である。

    ▶診断のポイント

    血中と尿中のM蛋白を免疫電気泳動(免疫固定法)で検出する。軽鎖(κ型,λ型)単独〔ベンスジョーンズ(BJ)蛋白〕型の場合はほとんど尿中に排泄され,血中M蛋白が検出されない。円柱腎症ではBJ蛋白が尿蛋白の大部分を占めるため,アルブミン尿を検出する試験紙定性検査では検出されない。確定診断は腎生検である。また,円柱腎症と他の腎合併症(アミロイドーシス,軽鎖沈着症など)が同時に存在することがある(糸球体性疾患ではアルブミン尿が主体になる)。蓄尿または部分尿のクレアチニン補正で尿中蛋白定量と尿中蛋白分画の両方を行い,尿中のM蛋白,BJ蛋白の割合と排泄量を定量化し,病態と治療効果判定に用いる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    遊離軽鎖の尿細管への過剰な負荷は,円柱腎症のみならず,炎症性サイトカインの産生と間質線維化に関与する。不可逆的病変への移行や腎死を防ぐため,早期の遊離軽鎖減少をめざす。治療は,①症候性多発性骨髄腫に対する全身化学療法,②血中遊離軽鎖の迅速な除去,である。

    ①従来の抗癌剤(メルファラン,シクロホスファミド,ビンクリスチン,アドリアマイシン,エトポシド)に加え,新規薬剤であるプロテアソーム阻害薬〔ボルテゾミブ(ファーストライン),カルフィルゾミブ,イキサゾミブ〕,免疫調整薬〔レナリドミド(ファーストライン),サリドマイド,ポマリドミド〕,モノクローナル抗体製剤〔抗CD38ヒト化抗体(ダラツムマブ),抗SLAMF7ヒト化抗体(エロツズマブ)〕,ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(パノビノスタット)のうち,作用機序の異なる2~3剤をステロイドと併用する。免疫調整薬のファーストラインで用いるレナリドミドは,高度腎障害での腎死回避目的では原則使用を避ける。

    ②血漿交換療法のほか,高性能膜を用いた血液透析濾過(HDF)を行う〔国外では,ハイカットオフ膜を用いた血液透析(HD)やHDFと,別の吸着カラムを組み合わせた血液浄化がある〕。血漿交換は,血漿中の遊離軽鎖を血漿分離器に通過させることで除去するが,血漿処理量(置換量)が少ない(1回の施行で患者血漿量の1~1.5倍)。一方,高性能膜によるHD/HDFでは膜の篩係数は劣るが,膜に接触する血漿量は血漿交換に比して大量で,HDFでは大量の限外濾過も加わり,1セッション後の単量体κ鎖(分子量2万2000)の除去率は血漿交換を上回る。ただし二量体のλ鎖や,重合でサイズが変化した場合には,HD/HDFでの除去は十分でない可能性がある。遊離軽鎖は体液中の分布容積が広く,短時間では終了後にリバウンドするため,頻回あるいは長時間かけての施行が望ましい。

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