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転移性肺腫瘍[私の治療]

No.5036 (2020年10月31日発行) P.40

佐々木治一郎 (北里大学医学部新世紀医療開発センター横断的医療領域開発部門臨床腫瘍学教授)

登録日: 2020-10-29

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  • 転移性肺腫瘍は,原発巣から肺に転移した腫瘍の総称である。経路としては血行性,リンパ行性,経気管支が想定されるが,肺は血液中に存在する腫瘍細胞の最初のフィルターになることから,血行性が最も多いと考えられる。転移性肺腫瘍を呈する状況のほとんどすべての場合は進行再発期であり,治療は進行期の原発腫瘍に対する標準治療に準ずるが,原発巣がコントロールされ,かつほかに転移巣がなければ,最初のフィルターに引っかかった腫瘍を除去することで,さらなる転移を抑制しうるというThomfordらの概念に基づき外科切除が行われる場合がある1)。転移性肺腫瘍を有する患者に対する症状緩和治療に関しては,原発臓器によらず共通である。

    ▶診断のポイント

    悪性腫瘍もしくは稀に転移をきたす良性腫瘍の既往または合併があり,肺に大小不同の多発結節・腫瘤を認める。時に転移性肺腫瘍のみで発見される原発不明癌もあるため,その場合は肺内結節の病理組織学的検査が必要である。転移性肺腫瘍の鑑別疾患としては抗酸菌症,特に粟粒結核,多発結節を生じるクリプトコッカスに代表される肺真菌症が挙げられる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    咳嗽や喀痰,呼吸困難などの呼吸器症状に関しては鎮咳薬,去痰薬,酸素療法等の対症療法を行う。痛みについてはWHO三段階除痛ラダーに準じて,アセトアミノフェンまたはNSAIDs,オピオイドを使用する。専門的緩和ケアが必要な場合は,緩和ケアチームや緩和ケア専門医にコンサルトする。

    転移性肺腫瘍そのものに対する治療(外科治療もしくは放射線治療)を行うか,全身がん薬物療法を行うか,症状緩和ケアに徹するか,あるいは経過を観察するかについては,以下の3つの因子についてアセスメントを行い,呼吸器および原発巣の関連領域の内科と外科に加えて,放射線治療科,緩和ケア科などと合同のカンファレンスを開催し,合議の上で治療方針を決定することが望ましい。

    ①腫瘍(原発臓器,組織型,バイオマーカー,薬物療法の感受性,転移の数や部位):他部位に先行してまず肺に転移巣を生じる癌腫と,転移がみつかる場合は肺以外の臓器を含む複数臓器に転移を認める癌腫が存在するため,原発癌腫の同定が非常に重要である。同時多発癌との鑑別が必要になる場合や,肺転移のみでみつかる原発不明癌もあるため,病理組織診断が重要になる。肺癌,乳癌,大腸癌などでは,遺伝子変異や蛋白発現など,効果予測因子であるバイオマーカーの情報が,治療方針決定に重要である。最も重要なことは,がん薬物療法への感受性であり,最近では同一癌腫でもサブタイプによりこの感受性が大きく異なることがあるため,この感受性を把握することが転移性肺腫瘍そのものに対する局所治療を行うかどうかの判断にきわめて重要である。分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により,これまで薬物療法の効果が期待できなかった癌腫においても長期の奏効を認めるようになったため,薬物療法に関する最新の情報をもとに検討する必要がある。

    ②患者〔年齢,臓器機能,症状,PS(performance status),社会機能〕。

    ③施設(胸腔鏡やロボット支援手術,定位放射線治療,緩和ケアチーム)。

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