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【識者の眼】「既存の学校欠席者サーベイランスは新型コロナパンデミックに役立つか?」杉浦弘明

No.5037 (2020年11月07日発行) P.58

杉浦弘明 (すぎうら医院理事長)

登録日: 2020-10-28

最終更新日: 2020-10-28

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筆者を含む出雲医師会と出雲医師会学校医部会は2007年に、国立感染症研究所の岡部信彦先生(当時)、大日康史先生、菅原民枝先生と共に厚生労働省科学研究のグラントで「学校欠席者サーベイランスシステム」を開発しました。後に保育園バージョンも開発されましたので、現在は保育学校欠席者情報システム(Nursery)School Absenteeism Surveillance System〔以下、(N)SASSy〕と命名されています。2009年の新型インフルエンザ流行時には島根県を含めて9つの県で導入されました。開発当時は出雲市内の小学校1校、中学校2校のたった3校で運用されていたものが、2018年末には、国内の約3万7000校(1万の幼稚園、保育園を含む)で導入されています。割合で示すと、全国の学校の約60%と幼稚園・保育園の40%で導入されています。18歳以下の366万人の子どもたちの毎朝の健康状態が学級単位でまとめられ、観察されています。

本システムは、感染症に罹患した子供の保護者が欠席理由を学校に報告すると、学校がインターネットでクラス単位の欠席理由を(N)SASSyサーバーに登録します。クラス単位の欠席理由ですので、個人情報は全く含まれません。本システムは自分の学校だけではなく、周辺地域の感染症流行状況が教師、生徒、保護者、感染症疫学調査官に情報提供され、感染症対策に役立てられています。オリンピック・パラリンピックのような、多くの方が参加する国家にとって政治的に重要な場面の健康危機管理対策としても有用です。

例えば、本システムに新型コロナウイルスの調査項目を追加することを予算化して、入力割合を100%まで高めると、18歳以下の新型コロナ感染症に関して悉皆調査による監視体制を構築できます。新型コロナのワクチン接種が行われていない現在、経済活動を活発化すると、それに呼応して2週間後に患者数が増えています。本システムは患者数の増減をグラフで可視化できることから、学校行事をいつ開催するか、開催日を早めるか、終息後にするかの判断にも有用です。

杉浦弘明(すぎうら医院理事長)[(N)SASSy]

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