【質問者】
宮野恭平 埼玉医科大学皮膚科講師
【AIは,医師と協力して診療を行う新たなパートナーとして位置づけられる】
皮膚科診療の肝は,「視診」です。皮膚科医は発疹を詳細に観察し,自身の知識と経験,勘を総動員して診断します。そのため,皮膚科診療のAIは視診の代替をめざすべく,画像認識分野を中心に開発が行われています。
2020年6月現在,国内において薬事承認を得た皮膚画像診断AIを搭載したソフトウェアやカメラデバイスはありません。今後の皮膚画像診断AIの可能性として,疾患・用途限定的AIと汎用診断型AIが考えられます。
疾患・用途限定的AIは,たとえば悪性のメラノーマと良性の母斑を判別するように,疾患や用途を限定したAIです。特に皮膚腫瘍で研究が盛んです。皮膚腫瘍は病変の大きさにばらつきが少なく,病理診断も日常的です。規格のそろった最終診断付き画像データが蓄積されやすく,開発しやすいと言えます。国内では,筑波大学の開発したAIが,皮膚腫瘍の分類において皮膚科医に匹敵する性能を示しています。
汎用診断型AIは,発疹画像をもとに診断の候補を提示するAIです。実装されれば非常に強力な診療補助ツールとなります。しかし,開発に必要な「最終診断付き画像データ」を大量に確保することが難しく,実用に足るものは開発されていません。皮膚疾患画像は様々な条件で,種々のカメラを用いて撮影されます。このため,画像条件の統一が難しいことが課題となります。高精度の皮膚画像診断AIの開発には,統一条件で撮影できるデバイスの開発が必要です。
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