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糖尿病患者のがん発生頻度と治療薬のがん予防効果の考え方は?

No.5032 (2020年10月03日発行) P.54

益崎裕章 (琉球大学大学院医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 (第二内科)教授/診療科長)

野見山 崇 (国際医療福祉大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科学教授/国際医療福祉大学市川病院糖尿病・内分泌代謝センター長,糖尿病・代謝・内分泌内科部長)

登録日: 2020-09-30

最終更新日: 2020-09-29

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  • 糖尿病患者のがんの発生頻度メカニズムの最新知見と糖尿病治療薬のがん予防効果に関する最新の考え方は?

    【質問者】

    益崎裕章 琉球大学大学院医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 (第二内科)教授/診療科長


    【回答】

    【糖尿病患者の死因第1位は悪性新生物。体重増加を避け,定期的にがんの検索を行う】

    糖尿病の合併症というと,細小血管症である神経障害,網膜症,腎症や大血管症である動脈硬化性疾患が有名ですが,実はわが国の糖尿病患者の死因第1位は悪性新生物,つまりがんです。糖尿病患者では,がんのリスクが約1.2倍であることが報告されており,糖尿病に併発したがん患者の予後が悪いこともわかってきました。がんの部位としては肺癌,肝癌,膵癌が多く,結腸癌,乳癌,子宮内膜癌,膀胱癌のリスクが非糖尿病者よりも上昇します。

    糖尿病ががんの発症進展を促進するメカニズムには不明な点も多く残されていますが,肥満に伴うインスリン抵抗性・慢性高インスリン血症が重要な病態であることを示唆する報告は数多くなされています。したがって,可能な限り肥満させない血糖コントロールを行うことが重要と言えます。また,日常診療においてもがん検診の受診を勧めるなど,定期的ながんの検索を行うことが重要です。主要ながんの部位から考え,腹部エコー,胸部・腹部のCT検査,便潜血検査などを行う必要があります。さらに,がんの発症に伴い血糖値が悪化するケースをよく経験します。生活習慣に変化がないにもかかわらず,血糖コントロールが悪化する場合には,がんの精査を行う必要があります。

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