株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

消化管神経内分泌腫瘍[私の治療]

No.5029 (2020年09月12日発行) P.38

伊藤鉄英 (福岡山王病院肝臓・胆のう・膵臓・神経内分泌腫瘍センターセンター長/国際医療福祉大学大学院医学研究科消化器内科教授)

登録日: 2020-09-11

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 消化管に発生する神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN)は,以前はカルチノイドと呼ばれてきたが,2010年のWHO分類によりカルチノイドという用語は,カルチノイド徴候のみに用いられるようになった。わが国の最新の消化管NENの全国疫学調査が2010年に施行され,年間受療者数は8088人と推定され,2005年の約1.8倍に増加していた。人口10万人当たりの有病者数は6.42人,新規発症数は年間で3.51人であり,前腸由来(食道,胃・十二指腸)が26.1%,中腸由来(空腸,回腸,虫垂)が3.6%,後腸由来(大腸,結腸)が70.3%で,欧米に比べ中腸由来の頻度は少ない。

    ▶診断のポイント

    病理診断が重要であり,2019年に改訂されたWHO分類では,NENはKi-67指数により高分化型のNET(neuroendocrine tumor)と低分化型のNEC(neuroendocrine carcinoma)に大別され,それぞれ治療戦略が異なる。症候性の消化管NETでは,主にセロトニンなどを分泌するため潮紅,下痢などのカルチノイド徴候を呈する。消化管NETでのカルチノイド徴候の合併は3.2%であり,欧米に比して低頻度である。多くのNETにはソマトスタチン受容体subtype 2が発現しており,それを利用したソマトスタチン受容体シンチグラフィーがNETの局在診断,遠隔転移の検索,治療効果判定に有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    内視鏡的切除または外科的切除をめざすのが標準であるが,切除不能例では腫瘍増殖を抑制し生命予後の改善と,臨床症状改善を目的とした治療が重要である。特に,消化管NETに対する治療法を選択する際には,組織学的グレード,肝転移の程度(腫瘍量),増殖の程度(Ki-67指数),内分泌症状の有無,患者の全身状態,などからみた総合的な判断が必要である。

    消化管NENに対する薬物療法は,NETとNECで異なる。肝転移に対して,ラジオ波焼灼術や肝動脈化学塞栓術なども選択される。再発予防の補助化学療法は,NETに対して確立していない。ホルモン症状を有する機能性NETに対しては,症状をコントロールする目的でソマトスタチンアナログとして,オクトレオチドやランレオチドが用いられる。腫瘍制御を目的とした場合には,ソマトスタチンアナログ,分子標的治療薬,細胞障害性抗癌剤が用いられる。

    また,NECに対しては,切除可能であれば切除が行われるが,その意義は明らかになっていない。また,切除が行われた場合は,術後の再発予防の目的にて,補助化学療法が検討される。NECにおいて,肝転移に対する切除は推奨されていない。切除不能例に対してはプラチナベースの化学療法として,エトポシド+シスプラチン(EP),イリノテカン+シスプラチン(IP),エトポシド+カルボプラチンなどが挙げられる。これらの治療に抵抗性の場合に有効な薬物療法は確立していない。

    残り1,432文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top