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【識者の眼】「在宅療養支援ができる看護職の育成のために」齋藤訓子

No.5031 (2020年09月26日発行) P.55

齋藤訓子 (公益社団法人日本看護協会副会長)

登録日: 2020-09-07

最終更新日: 2020-09-07

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首に保冷剤を入れて出勤していた猛暑の日々が終わろうとしています。夕方になると涼やかな虫のハーモニーが秋の到来を知らせてくれます。しかしまだまだ気温差が激しい首都圏の9月、コロナ対応に神経をすり減らしている医療現場は季節の変化を感じ取る余裕はありません。

さて、前回(No.5026)、2020年度診療報酬改定で医療機関からの訪問看護について「訪問看護・指導体制充実加算」が新設されたことをお伝えしました。訪問看護サービス提供を担う主たる事業所は訪問看護ステーションで、病院・診療所からのいわゆる「みなし」で訪問看護サービスを提供する医療機関は病院が2411カ所、診療所は1599カ所(2019年7月17日中央社会保険医療協議会総会資料)となっています。在宅患者訪問看護・指導料の算定要件を満たしているといっても、算定できない、あるいはしないのは、おそらく、看護師の人員確保と在宅医療への問題意識という課題があるのではないかと思います。

前者は、「みなし」でできるといっても人員がぎりぎりでは在宅に回せない、あるいは訪問看護ができるスキルの問題もあります。とかく「訪問看護はベテランじゃないとできないのでは」と思われがちですが、根拠はありません。ある訪問看護ステーションの管理者は、長年、病院で働いている人が訪問看護の現場に来ると、人の暮らしと身体の関連性やその人の価値観を大事にした生活を実現する際の様々な工夫や妥協点を見いだすまでに時間がかかるとおっしゃっています。訪問看護の未経験者や新卒でも教育体制を整えていけば、1年後には立派な訪問看護師になれます。

後者は、管理者の受けてきた教育に課題があるのだと考えています。在宅看護が基礎教育に位置づけられたのは1996年なので、まだまだ問題意識が成熟していないのかもしれません。ですが、今や病院勤務だろうと診療所勤務だろうと地域に暮らす生活者を支える看護が基盤になります。どのようにしてご自宅での暮らしを保証する看護を急性期から提供するのかが問われる時代です。特に大規模病院には看護職の教育体系としてクリニカル・ラダーを使っているところがあります。まったくの私見ですが、私はこのラダーに訪問看護の研修を1〜2週間、入れるといいのではないかと考えます。病院で働くすべての看護職が訪問看護を経験すると病院内でのケアがどのような変化を起こすでしょうか? 考えるとワクワクしてしまいます。

齋藤訓子(公益社団法人日本看護協会副会長)[在宅医療]

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