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【緊急掲載】安倍内閣の医療改革(方針)をどう総括するか?[深層を読む・真相を解く(102)]

No.5029 (2020年09月12日発行) P.54

二木 立 (日本福祉大学名誉教授)

登録日: 2020-09-03

最終更新日: 2020-09-03

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安倍晋三首相は、連続在任日数で歴代最長記録を更新した直後の8月28日、突然、持病の再発を理由に、辞任する意向を表明しました。7年8か月間も続いた超・長期政権の政策を総括することは、直ちにはできません。本稿では「予備的報告」「速報」として、安倍内閣の医療改革(方針)を、その前の民主党政権と比較しながら、鳥瞰します。

厳しい医療費抑制政策の復活

安倍内閣の医療政策の、民主党政権との最大の違いは厳しい医療費抑制政策を復活させたことです。民主党政権は2010年度と2012年度の診療報酬改定で、診療報酬「全体」(診療報酬本体と薬価の合計)をそれぞれ0.19%、0.004%引き上げました。安倍内閣も2014年度改定では0.10%(消費税引き上げ分対応を含む)引き上げましたが、その後、2016、2018、2020年度と3回連続引き下げました。医療機関向けの診療報酬「本体」はわずかに引き上げましたが、民主党政権時代に比べるとごく小幅でした。

その結果、第二次安倍内閣時代の2013~2017年度の5年間の国民医療費の年平均伸び率は1.9%に過ぎず、その前の民主党政権時代の2010~2012年度の平均2.9%よりはるかに低く、小泉内閣時代(2002~2006年度)の5年間の平均1.3%に近くなっています。なお、「概算医療費」は2019年度まで発表されていますが、それの2013~2019年度の7年間の平均伸び率も1.8%にとどまります。

民主党政権時代は「リーマンショック」後の不況が続いたためもあり、3年間のGDPの年平均伸び率が0.2%にすぎなかったのに対して、第二次安倍内閣時代(2013~2017年度)の5年間の年平均伸び率は2.1%と遙かに高くなっています。それにもかかわらず、医療費の伸び率が低いことには驚かされます。国民医療費のGDPに対する割合は、民主党政権時代は上昇し続けましたが、安倍内閣時代は7.90%前後に固定されました。

私は、「骨太方針2015」を分析した際、安倍内閣の社会保障関係費(国費)削減目標は、小泉内閣の「『骨太方針2006』を上回る」と書きましたが、今回、これが大げさでなかったことを確認しました(『地域包括ケアと福祉改革』勁草書房,2017,97頁)。

厳しい医療費抑制政策で医療機関が経営的に疲弊したことが、新型コロナ感染症爆発に対する医療機関の対応に負の影響を与えた可能性があります。

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