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【識者の眼】「医師の働き方改革、タスクシフティングの目指すところは?」石﨑優子

No.5031 (2020年09月26日発行) P.56

石﨑優子 (関西医科大学小児科学講座准教授)

登録日: 2020-08-31

最終更新日: 2020-08-31

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勤務医の時間外労働の上限規制の適用が始まる2024年4月が迫り、タスクシフティングの推進が検討されている。タスクシフティングとは、業務を他者あるいは他職種に移管・移譲することを指し、医師の働き方改革の「切り札」である。業務のシフト先は、ICT、非専門職(例:医療事務職)、専門職(例:看護師、薬剤師)がある。一方、タスクシェアリングとは、業務を他者と共同で行うことであり、移すのではなく分かち合う。厚生労働省の「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」では、「実施可能な業務」「明確に示されていない業務」「実施できない業務のうち、十分実施可能で法改正等を行えば実施可能となる業務」に分け検討し、30の医療団体にヒアリングを行っている。しかし、医師の業務をシフトされる側は過重労働にならないのだろうか。看護師の団体である日本看護協会は上述の検討会のヒアリング資料に、看護師から他職種へのタスクシフティングを挙げており、医師から業務をシフトされる看護師はさらに他職種にシフトすることになる。

以上よりタスクシフティングにはいくつかの課題がある。①シフト先は過重労働にならないか。シフトされる側がICTや非専門職であれば良いが、専門職は数が限られている。②シフトする側/される側の対話はあるのか。医師の時間外労働の削減一辺倒にはなってはいないか。③シフト先のインセンティブはどうか。診療報酬を反映させる必要があるであろう。④安全性をどう保つのか。医療行為は最大限の注意でリスクを最小限にしており、リスク管理がおろそかになってはならない。

そこでタスクシフティングは業務の移管ではなく、チーム医療に転換すると考えてはどうだろうか。医療現場はメンバーに何らかの緊急事態が生じても他がカバーできれば、事故に至らない。そのように考えると働き方改革におけるタスクシフティングの目指すところは、単なる業務の移管ではなく、多職種がその専門性を活かした役割を全うし相互に補完しあい協働するチーム医療を実現することであろう。

石﨑優子(関西医科大学小児科学講座准教授)[時間外労働上限規制]

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