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【識者の眼】「医師が行う社会的処方への期待」馬見塚統子

No.5030 (2020年09月19日発行) P.60

馬見塚統子 (社会医療法人財団大和会 東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)

登録日: 2020-08-26

最終更新日: 2020-08-26

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イギリスを発祥とする「社会的処方」を日本でも取り組む方針が厚生労働省から出され、先日NHKニュースにも取り上げられた。70歳まで働いたとしても、人生100年時代ではその後20〜30年の時間があり、その過ごし方(社会とつながりがあるかないか)で、その後の健康や介護状態に有意な相関関係があることが背景にある。

医師が守備範囲を広げて社会(コミュニティ)参加に関する提案を行う意義は何であろう?それは医師から伝えられるインパクト(影響力)の大きさであろう。「○○先生に言われたから、そうしようかな」である。私自身も医師が患者さんへ今後の処遇について重要な話をする場面に立ち会った際に、それまで患者さん自身が納得されていなかったことが○○先生の話しっぷりで、まるで魔法を掛けられたように納得されてしまう場面を何度か経験したことがある。それだけ医師の患者への影響力は強いのだ(逆に福祉は、日本では学問や従事者のジェンダー、地位など様々な側面から対極に位置する)。

社会的処方は、イギリスではスポーツ、文化、芸術、ボランティア活動、学習など多彩なプログラムがある。日本でも既存の様々な活動はあるが、現在の社会の課題(格差、貧困、孤立、フレイル等)の解決に向けて、新しい地域の活動や場づくりの草創期である。医師の影響力が強いのは患者だけではない。地区医師会は行政やコミュニティにも影響力があるので、社会的処方に適する活動が創られる過程を応援して欲しい。具体的には、寄付や投資などの資金援助や人的協力、休日の医療機関の駐車場や会議室などの場所の協力などが考えられる。自分が調べたり応援している活動があれば患者さんへの紹介もしやすいし、参加した患者さんの体験談や改善状況で活動の状況や効果を把握することができる。地域団体が活動のプレゼン大会をしたり、ウェブで活動内容の宣伝と応援の募集ができるような仕組みを行政や医師会が協力して持ち、それを医師が応援するような活動に、税の控除など診療報酬に代わる対価があるといい。

馬見塚統子(社会医療法人財団大和会 東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)[社会的処方]

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