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【識者の眼】「コロナ禍での精神科デイケア─就労形態の変化に対応が必要」平川淳一

No.5028 (2020年09月05日発行) P.58

平川淳一 (平川病院院長、東京精神科病院協会会長)

登録日: 2020-08-25

最終更新日: 2020-08-25

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精神科デイケアは、主に長期入院となった統合失調症患者が退院した後の社会生活支援の拠点として、より入院生活に近い、病院の外来等で行ってきた。部分入院(partial hospitalization)という表現がより相応しいかもしれない。ここでは、集団精神療法、レクリエーション、生活指導、療養指導などが行われ、生活の場を地域に置いた形で、病院への依存からの脱却、社会への適応等を行い、最近ではハローワークと協働で、就労支援まで行っている。一方、うつ病などの増加により、入院はしないが長期在宅療養する患者が増加し、診療所におけるデイケアが急速に普及している。ここでは出勤できない患者のために、通勤や実際の業務を想定した訓練を「リワーク」と称して行っている。都市部では巨大なデイケアセンターが数施設でき、うつ病からネット依存、発達障害など新しい分野に対応している。精神科デイケアの診療報酬は、前述の統合失調症モデルが始まりであり、経済誘導もあって、精神科専門療法の他部門に比較して収支が良いが、これを精神科デイケアの中では異質のリワークが使うことで違和感が生じ、議論になっていた。そのような中で、新型コロナウイルス感染症が拡大している。

在宅勤務にシフトできる企業は積極的にこれを取り入れ、自宅で業務ができれば、労働者側は職場の人間関係など気にせず、通勤の苦労も時間もなくなり、人生の時間が増え、逆に雇用者側は、通勤費の削減などでメリットがあるという気づきが生まれ、ウィズコロナの時代が明確にイメージできるようになってきた。早朝、起きれない患者も、通勤で疲れてしまう患者も、職場の上司の顔を見るだけで動悸がする患者も、好都合な環境ができたことになる。これに伴い、「リワーク」の訓練メニューも大きく変わることになるだろう。精神科病院でのデイケアは、緊急事態宣言の間は休止とし、デイケアスタッフは、それぞれの患者に電話で病状や服薬状況の確認をしたり、訪問看護を行うなどして乗り切った。解除後は、マスク、手洗いなど感染に注意しながら、ソーシャルディスタンスを取り、きちんと生活し命が守れるよう指導しながら、嵐が過ぎるのを待っている。ほとんどの患者は脱落することなく通院継続している。しかし、診療所のデイケアでは来院数が激減し、危機的な状況であると聞く。就労形態が大きく変化する中、リワークは早急かつ根本的な対応が必要と思われる。

平川淳一(平川病院院長、東京精神科病院協会会長)[新型コロナウイルス感染症]

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