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膠原病合併妊娠[私の治療]

No.5024 (2020年08月08日発行) P.46

村島温子 (国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター主任副センター長・妊娠と薬情報センターセンター長)

登録日: 2020-08-11

最終更新日: 2020-08-05

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  • 膠原病は自己免疫的機序で生ずる結合組織病で,多発関節痛を共通の症状とする。本稿では,患者数が多い関節リウマチ(RA),妊娠管理が難しい全身性エリテマトーデス(SLE)について取り上げる。また,抗SS-A抗体と抗リン脂質抗体についての対処法について述べる。

    ▶診断のポイント

    RAは手指関節を中心とした炎症であるため,痛みだけでなく,発赤・腫脹・熱感の有無も確認する。RAの診断には,抗シトルリン化ペプチド抗体が有用である。活動性の指標はCRPや赤沈であるが,軽度の炎症では反映されない。また,MMP-3も評価に用いられるが,ステロイド使用や妊娠により上昇する。

    SLEは関節痛,発熱で発症することが多い。検体検査では抗核抗体陽性,抗DNA抗体上昇,低補体価,白血球(リンパ球)減少が特徴である。ループス腎炎は最も頻度の高い臓器病変であり,蛋白尿,顕微鏡的血尿,細胞性円柱を認める。妊娠中はしばしば妊娠高血圧腎症との鑑別が必要となる。

    抗SS-A抗体と抗リン脂質抗体は多種類の測定法があり,その解釈も重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    RAの活動性が高いと妊孕性が低い,妊娠してからのよい状態が維持しにくい,妊娠高血圧症候群や早産などの合併症の頻度が増える。したがって,催奇形性のなさそうな抗リウマチ薬(DMARDs)を用いて寛解状態を維持し,妊活するのが基本方針である。サラゾスルファピリジン,ブシラミン,タクロリムス,これまで妊活中の女性に使用経験のある生物学的製剤(アダリムマブ,エタネルセプト,セルトリズマブ ペゴル,ゴリムマブ,トシリズマブ,アバタセプト)は使用しながらの妊活が可能である。RAは妊娠すると軽快することが多い。たまたま児に先天異常が発生したとしても薬のせいにされがちであることから,妊娠成立後も薬剤を継続する必要があるかどうかについては,患者の意向も聞きながら判断する。メトトレキサート(MTX)をはじめ,妊婦禁忌の薬剤の使用中は避妊する。MTXで治療している場合には,中止してから1回月経を見送ってから妊娠解禁とする。

    SLE合併妊娠はハイリスクであることを,患者や家族が理解していることが肝要である。また,活動性が高いまま妊娠するとSLEの再燃や妊娠合併症のリスクが高くなるため,維持量のステロイドで半年以上安定していれば妊娠可能とする。プレドニゾロンの減量のためにヒドロキシクロロキン(HCQ)や免疫抑制薬を併用することが多い。HCQ,タクロリムス,アザチオプリンは妊娠中も使用できる。なお,高度の慢性腎疾患や肺高血圧症など重症な臓器病変を伴う場合には,妊娠は避けるべきである。
    抗SS-A抗体はシェーグレン症候群やSLEばかりでなく,健常な女性であっても1%ぐらいは保有している。本抗体陽性の母体では,10%前後で新生児ループス〔紅斑,血球減少症,肝機能異常,心ブロック(CHB)〕児を出産する。CHBを発症する頻度は約1%と稀ではあるが不可逆性で,生後ペースメーカー植込みを必要とすることが多い。発症のリスクとしては,前児がCHBであること以外は明らかになっていない。HCQに予防効果があるとの報告があるが,確立はされていない。

    抗リン脂質抗体は抗カルジオリピン抗体,ループスアンチコアグラント(LA)として測定される。抗リン脂質抗体は,胎盤血管の血栓の原因となるだけでなく,妊娠初期に胎盤らせん動脈のリモデリングを障害し,胎盤機能不全を引き起こすと推測されている。抗リン脂質抗体症候群(APS)の標準的治療は,低用量アスピリンとヘパリンである。血栓症の既往ならびにLAが陽性の症例については,これだけでは不十分な場合もあり,経験のある施設で管理すべきである。SLEの約3割が抗リン脂質抗体を保有する。血栓症の既往がない初めての妊娠では,APSの分類基準を満たさない。このようなケースでもLAが陽性の場合には,APSに準じた治療が必要である。血栓症の既往があってワーファリン(ワルファリン)を内服している場合は,妊娠判明と同時にヘパリンに変更する。

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