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【識者の眼】「Life with COVID-19での訪問看護の価値」齋藤訓子

No.5021 (2020年07月18日発行) P.59

齋藤訓子 (公益社団法人日本看護協会副会長)

登録日: 2020-07-07

最終更新日: 2020-07-07

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東京都の感染者数が再度、増加している時期(7月3日)に執筆しています。

さて、読売新聞が6月23日に「訪問サービス『命がけ』継続」という見出しで訪問看護を取り上げておりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で通所介護サービスが使えなくなった、訪問介護の利用者さんに発熱が見られ、ヘルパーさんが撤退し、訪問看護師が防護服を着用して生活支援に入り、何とか在宅生活が継続しているという内容でした。今回のCOVID-19の影響は経済への打撃等、計り知れない状況がある中、在宅医療では、看護師の価値が大きくなったと感じています。先のメディアでの報道にあるように、感染対策の知識と技術が基盤にあることが介護との最も大きな違いであり、コロナ禍で改めて認識した方も多いのではと思います。

Life with COVID-19となる今後も、在宅医療の推進は医療政策の1つの柱であろうと考えますが、やはりまだまだ在宅医療の資源が十分にないことが課題です。在宅医療は訪問診療だけでは成り立ちません。実際に在宅医療に携わっている医師たちは「在宅医療の中心はやはり訪問看護だ」とおっしゃいます。しかし、その訪問看護は以前、述べたように、ここ数年は訪問看護ステーション数が急激に伸びている一方で、休止・廃止となる訪問看護ステーション数も増えています。全国訪問看護事業協会の報告では2020年4月で届け出数1万2381カ所、稼働数1万1930カ所、新規開設数1376カ所、休止・廃止数783カ所(いずれも速報値)となっております。特に東京都、大阪府、愛知県といった都市部において訪問看護ステーション数の増加と休止・廃止が同時に起きています。一方、市町村ごとでは、訪問看護ステーションのない市町村は約1/3を占めており、ほとんどが人口規模が小さなところです。地域の特徴に応じた過不足のない在宅医療提供体制を整備していくためには、地域の資源の把握が必要です。おそらく今後は都市部ではサービスでの競争が起こり、資源の少ない地域は連携協働で人材育成や人材の有効活用が求められてきます。

後者の資源の少ない地域で過不足のない在宅医療提供体制を整備するには、病院・診療所が在宅医療を提供する体制が求められるのではと考えており、日本看護協会が検討した「訪問看護師倍増計画」においては、病院・診療所の看護師が訪問看護を実践することをどのように推し進めていくかを計画しているところです。

齋藤訓子(公益社団法人日本看護協会副会長)[在宅医療]

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