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【識者の眼】「面会制限時代における入院診療─遠隔デバイスに対する支援制度を」川口篤也

No.5020 (2020年07月11日発行) P.59

川口篤也 (函館稜北病院総合診療科科長)

登録日: 2020-07-01

最終更新日: 2020-07-01

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新型コロナウイルス感染症が流行してからほとんどの医療機関、介護施設では面会制限を行っており、長期に渡る面会制限により様々な問題が生じている。入院中に状態が悪化しそのまま亡くなる場合には、家族は本人にほとんど会えないまま最期を迎える。状態は改善したが入院治療によるADL低下でそのまま自宅への退院が難しい場合にも、家族は本人の状態を自分の目で確認していない状況で今後の療養先を決めなければならないことも多い。入院前までは自力で歩いていた人なのに、入院して一度も会えないままに自宅に帰ることができないと医療者から説明を受けて半信半疑のまま次の療養先を決め、本人に会えるのは退院日に次の療養先へ移動する時のみで、施設に入っても面会できない状況が続いている。また当院では訪問診療を行っているので、「本人に会えないのであれば看取りも含めて家に連れて帰ります」という形での在宅療養も増えている。

感染の流行により地域差はあるが、概ね全国でこのような状況が続いているのではないだろうか。確かに医療機関・介護施設でのクラスター発生が数多く起こっており、必要な感染対策であることは間違いない。ただし感染終息まで時間がかかると思われる状況で、いつまでも同じ対応というわけにはいかない。しばらくは完全に面会自由ということにはならないので、地域の流行状況により面会制限をフレキシブルに緩和しながらも、今後も制限がある前提で患者側、医療機関側双方にメリットのある方策が必要だろう。タブレット端末での画像通話で話をしたり、本人のリハビリの様子を見てもらったりなど、ますます遠隔デバイスによるコミュニケーションが必須となる。端末の購入や、そこに時間を割くことになる人員に対する支援制度をぜひとも考えていただきたい。今後も変わってはいけないことは残しながら、変わらなければならないことに対処していくことが医療機関には求められるだろう。

川口篤也(函館稜北病院総合診療科科長)[新型コロナウイルス感染症]

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