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【識者の眼】「より効果的な子どものがん教育のために」垣添忠生

No.5016 (2020年06月13日発行) P.67

垣添忠生 (日本対がん協会会長)

登録日: 2020-05-25

最終更新日: 2020-05-25

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子どもに対して、しっかりと気合いを入れてがんの話をすると、驚くほどの豊かな感受性で受け止めてくれる。関係者の間ではよく知られている話だ。生命には限界があること、がんとはどういう病気か、たばこの害、検診の大切さなどを、特にがんサバイバー(がん経験者)と共に話すと、とりわけ効果が高いと感じている。

子どもが家に帰って学校で聞いた話を報告する際、「お父さん、たばこを止めては」とか、「お父さん、お母さん、がん検診を受けてる?」などと訴えると、親の心に響く。

大人にとっては、たばこの害や検診の必要性は耳にタコで、なかなかスッと心に届かない。しかし、自分の子どもに言われれば、耳を傾けるのだ。がん教育には子ども自身の理解を深めるほか、そんな効果もある。

文部科学省は学習指導要領を改訂し、中学校では2021年度から、高校では22年度から、それぞれ保健体育授業でがん教育が実施されることとなった。

先生方は、教えなければならない内容が増加の一途で、もはや限界に近い。そこで、外部の医師や研究者と連携し、さらに前述したがん経験者にもボランティアとして加わってもらうと、迫力のある話をしてもらえる。がん教育の出張授業は各地で開かれており、中学校や小学校でも大きな成果をあげている。このような外部ボランティアを各地で組織化し、研修などを通じて語り方を磨くことが急務である。

日本対がん協会では「よくわかる!がんの授業」といったDVDを作成し無料で配布してきた。日本対がん協会以外にも、専門家が各種のDVDを、子ども向け、あるいは教師向けに作成し配布する動きが活発である。

欧米のように、「死の準備教育」を取り入れることも一考に値する。子どもに対するがん教育の重要性はますます高まっている。

垣添忠生(日本対がん協会会長)[学習指導要領改訂]

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