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【識者の眼】「『外来機能の明確化』は都市部の検討課題」小林利彦

No.5014 (2020年05月30日発行) P.59

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2020-05-15

最終更新日: 2020-05-15

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厚生労働省の「医療計画の見直しに関する検討会」にて外来医療を取り巻く現状と検討の方向性が最近にわかに議論されているが、これは医療機関の機能分化や病床数の適正化を目指している地域医療構想と無縁のものではない。実際、地域医療構想の策定根拠として、多くの地域では今後10年間ほどで入院患者の需要がピークを迎えるというデータ分析結果が示されているが、外来医療については2015年の時点で既に需要のピークを迎えていたという事実はあまり認識されていない。

2017年の患者調査によれば、外来患者数(歯科を除く)は入院患者数と外来患者数の合計(715万6000人)の81.7%を占めるものの、絶対数は近年ほぼ横ばいで推移している。また、外来患者の61.6%は無床診療所、10.5%は有床診療所、27.9%が病院での受診となっており、年齢階級は入院患者よりやや低く70〜79歳代にピークがあるほか、循環器系疾患・整形外科疾患・呼吸器系疾患といった生活習慣病や高齢疾患が上位を占めていることなどが分かっている。

そのような背景のもと、先に述べた検討会では、外来医療計画や病床機能報告、地域医療構想などの既存制度との整合性を図るために、「外来機能の明確化」に関する議論が現在進められている。具体的には、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)等を基に分析された外来機能領域として①医療資源を重点的に活用する入院前後の外来、②高額等の医療機器・設備を必要とする外来、③特定の領域に特化した知見を有する医師・医療人材を必要とする外来─の3類型を提示しており、特に、地域医療支援病院や特定機能病院を含む「病院」における外来機能のあり方について、「外来機能報告」をも視野に入れた検討を行っている。

折しも、外来医師偏在指標による外来医療情報の可視化が進められているが、外来医療のあり方は地域によって大きく異なり、人口過疎地域では診療所医師の高齢化とともに病院による外来診療割合が増えている。そのような状況下、いわゆる「かかりつけ医」に期待される「一般外来」での診療機能と、医療の高度化により従前は入院でないと行えなかった治療や医学管理等を外来で担う「専門外来」機能を区別しようとする意図は理解できるが、人的および設備的な医療資源の多寡を考えると、人口が多い比較的都心部にて当てはまる検討課題と言えそうだ。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[#地域医療]

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