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【識者の眼】「多疾病併存患者を支える二人主治医制」川越正平

No.5014 (2020年05月30日発行) P.60

川越正平 (あおぞら診療所院長)

登録日: 2020-05-14

最終更新日: 2020-05-14

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松戸市医師会では、急性期病院の主治医から紹介をうけ、会員医療機関が副主治医として病院主治医を支援する二人主治医制を推進している。多疾病が併存する患者には、病院の専門外来が提供する疾病管理だけでは対応が難しいことに対する解決策として、かかりつけ医という地域資源を活用するという考え方である。対象患者は、①専門外来担当医師が専門外の疾病も含め複数の病態を診療していたケース、②複数の診療科を併診していたケース、③複数医療機関を掛け持ち受診していたケース─の3つに大別できる。これらの患者に対して行う介入の概要を紹介する。

医療関連については、訪問診療の導入が必要になる患者も少なくない。加えて、訪問看護や訪問薬剤管理指導を要する患者がいる。外来で既に訪問看護が導入されている患者の場合、その後はかかりつけ医から訪問看護指示を出すことで連携体制がより密になる。介護関連については、既に介護保険サービスを利用中の方もいるが、これを機にケアプランの見直しや区分変更申請を要した方、認定済みながら未利用であったが利用を開始した方、新規申請を行った方など、介護保険利用に関する調整を要する患者は半数近くに及ぶ。

加えて、住まいの構造に起因する困難や、支え手となっている家族の健康維持に必要となる助言、さらには、生活保護申請、8050世帯への福祉相談機関紹介等の課題に対応を要する事例もあった。このように、多疾病併存患者の場合、本人とその世帯が医療・介護・保健・福祉など多領域に渡る課題を有している実態が浮き彫りとなった。

高齢入院患者は退院にあたり困難に直面することが少なくないと病院では認識されている。しかし、実際には外来通院の時点から既に多領域の課題を抱えている患者が少なくない。にもかかわらず、外来患者には看護師やMSWの関わりが少なく、保健福祉領域はもちろん、介護に関する課題の把握や介入すら困難である。結果的に、病院側が在宅医療への移行を考慮するタイミングが、退院支援の段階では遅すぎる場合が多くなる。外来通院可能な時点から、在宅医療に取り組むかかりつけ医が副主治医となり、生活の視点に基づいて早期に課題の把握や必要となる介護・福祉との連携に取り組む意義は大きい。

川越正平(あおぞら診療所院長)[多疾病併存二人主治医制かかりつけ医 

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