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下垂体腫瘍[私の治療]

No.5012 (2020年05月16日発行) P.39

登録日: 2020-05-15

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  • 下垂体部には多くの腫瘍性病変が発生するが,ここでは下垂体腫瘍と下垂体腺腫を同義語として扱う。下垂体腺腫は下垂体前葉由来の腫瘍であり,そのほとんどが良性腫瘍である。最新の日本脳神経外科学会の登録によると,2016~17年度の手術症例は原発性脳腫瘍の17.2%を占め3番目に多い。下垂体腺腫は腫瘍が不適切にホルモンを分泌することにより,特徴的な臨床症状を呈する機能性腺腫と,それ以外の非機能性腺腫にわかれる。本稿では機能性腺腫の中で頻度の高い成長ホルモン産生腺腫,プロラクチノーマ,クッシング病について述べ,また非機能性腺腫についても解説する。

    ▶診断のポイント

    下垂体腺腫が疑われる場合,下垂体前葉ホルモンの基礎値およびコルチゾール,IGF-I,テストステロン(男性),E2(女性)を測定する。同時に下垂体中心の造影MRI(冠状断,矢状断)を行う。画像上,腫瘍が視神経を圧迫している場合は眼科で視力視野の評価を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    プロラクチノーマ以外の下垂体腺腫は手術が第一選択となる。現在,手術は内視鏡を用いた経鼻的手術が主流である。手術でコントロール不良な場合は,薬物や放射線治療が選択されることが多い。次に,それぞれの下垂体腺腫の治療方針につき述べる。放射線治療については最後に解説する。

    【成長ホルモン産生腺腫】

    治療の第一選択は経鼻的腫瘍摘出術である。また後述するが,術前のソマトスタチン誘導体投与により腫瘍縮小が期待できる場合がある。

    薬物療法は,合併症で手術の危険性が高い場合や手術後コントロール不良例に使用され,大きくわけて3種類存在する。まずソマトスタチン誘導体であるが,現在オクトレオチド(Oct),ランレオチド(Lan),パシレオチド(Pas)が使用可能で4週間に1回の注射薬が用いられる。その中でもPasはソマトスタチンレセプター(SSTR)type5に強い親和性を持ち,OctやLanで効果が不十分な症例にも効果が期待できる。ただし,副作用として高血糖に注意する必要がある。次にドパミン作動薬であるブロモクリプチン(BC)を1日当たり2.5~15mg,2~3回に分けて食直後に経口投与する。カベルゴリン(Cab)も有効であるが保険適用はない。また,GH受容体拮抗薬であるペグビソマントが使用されることもある。この薬剤は1日1回,10~30mgの皮下注射が必要でありIGF-Iの正常化率は高い。ただ,腫瘍に直接作用する薬剤でないため,MRIによる定期的な腫瘍のチェックが必要である。また,単独の薬物療法でコントロール不良の場合には薬物併用療法が行われることもある。

    【プロラクチノーマ】

    下垂体腺腫の中で唯一薬物療法が第一選択となる。保険適用となっている薬剤はCab,BC,およびテルグリドであるが,通常,副作用が少なく週1回の投与が可能なCabが用いられることが多い。Cabの場合,0.25mg/週より開始し,プロラクチン値により漸増する。保険適用上の上限は1mg/週である。手術は薬物抵抗例や副作用(嘔気,起立性低血圧など)で服薬できない場合に行われる。

    【クッシング病】

    治療の第一選択は経鼻的腫瘍摘出術である。合併症などで手術の危険性が高い場合や,術後コントロール不良例については薬物療法が選択される。

    薬物療法は,ACTH抑制療法とコルチゾール抑制療法にわかれる。前者で保険適用があるものはPasで4週間に1回10~40mgを臀部に筋肉内注射する。そのほか,ドパミン作動薬としてCabが使用されることもあるが保険適用外である。一方,後者で保険適用となっている薬剤はメチラポン,トリロスタン,ミトタンである。

    手術,薬物療法,および放射線治療が無効でほかに治療法がない場合は,両側副腎摘出と生理量のヒドロコルチゾン補充療法を考慮する。

    【非機能性腺腫】

    視力視野障害など,腫瘍の圧迫による神経症状が存在する場合は治療適応になる。また近年,めまい,頭部外傷,健診など,下垂体腫瘍による症候以外の理由で施行された画像検査で偶然発見される下垂体病変が注目を浴びている。これらを下垂体偶発腫瘍と呼び,非機能性腺腫も含まれている。日本脳ドック学会の治療指針によると下垂体偶発腫瘍の場合,腫瘍が視神経に接触,あるいは圧迫している場合は手術適応とされている。

    治療の第一選択は,経鼻的腫瘍摘出術である。稀に,腫瘍が不規則にトルコ鞍上部に進展している例では開頭術が選択される場合もある。腫瘍が残存した場合は,半年に1回程度画像検査を行い,腫瘍が増大する場合には放射線治療が選択される。

    【放射線治療】

    機能性腺腫の場合,手術や薬物療法でコントロール不良の場合に選択される。また非機能性腺腫の場合は,術後の残存腫瘍が増大する場合に行われる。以前は分割照射が行われていたが,現在はガンマナイフ,サイバーナイフなどの定位的放射線治療が広く行われている。

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