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【識者の眼】「新型コロナ感染症における医薬品供給不安に備えよ」坂巻弘之

No.5013 (2020年05月23日発行) P.66

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2020-05-07

最終更新日: 2020-05-07

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりマスクを始めとする衛生材料や医療材料の不足が深刻な問題となっている。医薬品については、わが国で供給不安は顕在化していないが、グローバルに欠品リスクが高まっている。すでにオーストラリアなどでは薬局における調剤制限を行っていたり、米国ではCOVID-19に関連する不足薬物がリストアップされたりしている(但し、具体的な薬物名は非公表)1)

医薬品欠品は、特許切れ医薬品市場での行き過ぎた価格引き下げや、予期せぬ自然災害による需要増、また、原薬供給ひっ迫などにより、いつでも起きうる事象として、日本を除く先進各国では議論が先行していた。特に原薬供給については、2010年頃からの世界的な原薬価格高騰に加え、近年の中国、インドへの依存度の高まりなどにより、グローバルな供給リスクとして認識されていた。

米国では、法律により米国食品医薬品局(FDA)などが欠品リストをデータベースとして公開しているし、欧州でも多くの国でデータベース化されている。オーストラリアでも、2019年以降、企業に供給に係る情報提供を義務付けるとともに、欠品による健康への影響が大きいと考えられる医薬品をリストアップしている2)

COVID-19以前から、諸外国では、パンデミックへ懸念は薄かったとはいえ医薬品欠品がグローバルな問題と認識されていた。自国製造や価格引き上げで対応できる問題ではなく、欠品は起こりうるものとの前提での対応であった。

わが国でも、今後COVID-19対応に限定せず、原薬供給や製品輸入が止まることが前提での対応を至急講ずるべきである。必須医薬品とその代替薬のリストアップは火急の課題であり、サプライチェーンに存在する在庫量の情報を共有する仕組み作りも国が主導して構築していくべきである。

【文献】

1) FDA Statement:Coronavirus (COVID-19) Supply Chain Update.

  [https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-supply-chain-update]

2) Australian Government, Department of Health, Therapeutic Goods Administration: Medicine Shortages Information Initiative.

  [http://apps.tga.gov.au/prod/MSI/search/]

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

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