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【識者の眼】「どこでもドア〜ポストコロナの時代」神野正博

No.5013 (2020年05月23日発行) P.64

神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)

登録日: 2020-05-01

最終更新日: 2020-05-01

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ポストコロナの議論は気が早いことかもしれない。しかし、すでにポストコロナの時代が始まっているという認識が必要だ。

実際、現場仕事が必要なわれわれ医療人ですら、多くの変化を許容し、これまで躊躇してきたイノベーションを享受することとなった。私もここ2カ月以上、地元に張り付きだ。病院団体の会議や厚労省の審議会、講演等で、東京との間を頻繁に往復してきたのは何だったのか! Web会議はまさに「どこでもドア」状態だ。移動時間なく、瞬間移動で、しっかりと会に参加し、情報を共有できることを実感する。昨今は病院内の会議もWeb会議だ。先日には法人職員と「オンライン飲み会」なるものも自宅から経験した。人とのつながりも問題ない。

もちろん、ポストコロナはこういったコミュニケーションの変革だけではない。医療を取り巻く社会で、5つの変化が想定される。まず、今後の医療提供体制の変化だ。感染症患者と免疫能が落ちた担癌患者を同じ医療機関で診ることで多くの不幸が生じる。新たな考え方として、迅速な検査が可能なトリアージ機関、感染症受け入れ病院、非感染症病院を規定することが求められているように思う。

2番目として、患者の受療行動と価値観の変化だ。特に、慢性疾患の患者は病院に行かなくとも管理可能なことを実感している。電話再診やオンライン診療などの遠隔診療への需要が一気に進むに違いない。

3番目として、物流の変化だ。他の商工業同様、病院もJust in Time & Stocklessの考え方で、発注点の見直しと頻回搬送によって在庫を削減し、経営の効率化を進めてきた。ここへきて個人防護具(PPE)等、特に非常時物品の枯渇が問題となった。病院の事業継続計画(BCP)と在庫のあり方に再考が必要だ。 

4番目として、環境問題だ。コロナ禍による産業の休止は地球温暖化を遅らせる。人と経済は、どちらの世界を善とするかだ。

そして、最後に社会の協働だ。ネット社会でも現実の社会でも、これまで以上に協働するプロジェクトが多数現れた。労苦を讃え、励まし合い、新たな知恵を公開し合う社会だ。

ポストコロナの時代は、捨てたものじゃない社会の到来かもしれない。

神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[新型コロナウイルス感染症]

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