株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

卵巣過剰刺激症候群[私の治療]

No.5011 (2020年05月09日発行) P.62

山田満稔 (慶應義塾大学医学部産婦人科学教室専任講師)

登録日: 2020-05-11

最終更新日: 2020-04-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome:OHSS)とは,排卵誘発に伴い卵巣腫大,血管透過性亢進,胸腹水貯留を生じる医原性疾患である。卵巣の過剰反応により血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の血中濃度が上昇し,血管透過性亢進に伴う血管外への水分移動と血管内脱水に起因する諸症状を呈する。重症例では肝・腎機能障害や血栓症により生命予後にまで影響しうる。排卵誘発における中等度から重度のOHSSの発生頻度は1~5%とされる。OHSSにはヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG)投与後数日以内に出現するearly onset型と,妊娠成立後に症状が進行するlate onset型がある。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    腹部膨満感,悪心・嘔吐,下痢,呼吸苦,腹痛,口渇,気分不快,尿量の減少などにつき,時間経過を含めて問診する。

    【検査所見】

    血液・生化学検査を行い,ヘマトクリット(Hct)値,血清蛋白,アルブミン等を把握するとともに,超音波断層検査にて卵巣腫大と腹水貯留の程度を確認して重症度を評価し,入院管理の必要性を判断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    OHSSは発症の予防が第一である。ハイリスク症例を抽出し,排卵誘発としFSH低用量漸増療法によりゴナドトロピン製剤の総投与量を抑える。triggerにはGnRHアゴニストあるいは低用量のhCGを投与する。重症化が危惧される場合には採卵のキャンセルも考慮する。

    【禁忌】

    OHSSの発症リスク因子として,OHSS既往,多囊胞卵巣症候群,高い卵巣予備能(抗ミュラー管ホルモンAMH>3.3 ng/mL,胞状卵胞数>8)が挙げられる。卵巣反応性の関連リスク因子として,多数の卵胞(10mm以上の卵胞数>20),高い血中エストラジオール値(>3500pg/mL)あるいは急速な上昇,多くの採卵数,黄体期hCG補充,妊娠が挙げられる。

    OHSS予防策としてドパミンアゴニストが有効と報告されている。ヒドロキシデンプン,アルブミン静脈注射,黄体期のGnRHアンタゴニスト,アロマターゼ阻害薬,低用量アスピリンなどの投与が提案されているが,いずれも予防効果に関する十分なエビデンスは得られていない。

    重症OHSSが発症した場合には循環血漿量(輸液にアルブミン製剤またはデキストラン製剤を使用)と腎機能の確保(低用量ドパミン投与)を行う。Hct≧45%での利尿薬の使用は禁忌である。

    残り1,231文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連物件情報

    もっと見る

    page top