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【識者の眼】「新型コロナウイルスで知る病診連携」細井雅之

No.5008 (2020年04月18日発行) P.65

細井雅之 (大阪市立総合医療センター糖尿病内分泌センター糖尿病内科部長)

登録日: 2020-04-01

最終更新日: 2020-04-01

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このタイトルは、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を病診連携で診ていこう」という趣旨では決してない。COVID-19によってわかる地域医療のありがたさだ。

以下は、よくあるケースだ。60代2型糖尿病女性患者。治療は経口血糖降下薬のみで、HbA1C 7〜8%台。定期的に、腹部エコーなどの画像検査を勧めるが、「いや、検査はいらない。痛くも何ともない」と断られる。「薬だけを出してくれ」という。こんな時は、「当院で検査を受けられないなら、お近くの先生にお薬を出してもらうようにしますよ。当院は、大きな検査をする時に来ていただくように半年後に予約をとりますよ」と、病診連携をお勧めするようにしている。「医療機能の分担のため、医療機器を使う画像検査や、教育指導は病院で行い、日常の投薬、血液尿検査をかかりつけ医で行ってもらう」という、趣旨を説明しようとするが、ここの障壁が高い。「昔からここに来ている」「大きな病院は安心だ」「電車に乗ったらすぐに来れる」「なんかあったら診てもらえる」「診察券がないと救急車で運んでもらえない(?)」「薬だけ取りに来るので、薬だけ出してくれたらいい」などなど……なかなか、逆紹介できない患者さんがおられるのも事実である。

ところが、である。今、巷は、COVID-19騒ぎ。当院は感染症指定医療機関であるため、COVID-19の患者さんが入院していることは知られている。つい先日のこと、トリアージナースから連絡があり、「電話で先生の患者さんが、新型コロナ感染が心配なので、次回の外来予約を変更したいと言っている。処方箋だけ郵送してほしいと言っている」と。前に、逆紹介を勧めて拒否された患者である。コロナ騒ぎになれば、あんなに当院に来ると言っていたのに、真っ先に来たくないとのこと。なんとも変わり身の早さには驚いた。あんなにまで「当院へ来る、来る」と言っていた方が、コロナ騒ぎになれば、「来たくない」と変わるのである。しかし、これがチャンスである。近くのかかりつけ医を持つことのすばらしさを知ってもらおうと思っている。こんな時こそ、かかりつけ医に日常診察をお願いして、地域連携の良さを知ってもらおうと決めた次第である。当院は行っていないが、「オンライン診療」を行っている医療機関も、これがチャンスかもしれない。ビデオ診療で院外処方箋を郵送すれば、2次感染が防げる。オンライン診療をするかかりつけ医もいいかもしれない。

いずれにしても、私の説得より、COVID-19の説得力のほうが強力である。

細井雅之(大阪市立総合医療センター糖尿病内分泌センター糖尿病内科部長)[病診連携②]

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