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【識者の眼】「Twitterで叫ばれる医師過労問題、つまるところお金の問題」倉原 優

No.5006 (2020年04月04日発行) P.64

倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)

登録日: 2020-04-06

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厚生労働省労働基準局は2019年7月に、「医師、看護師等の宿日直許可基準について」という文書を公表し、宿直のことを「①通常の勤務時間から完全に解放された後のものである、②宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限る、③一般の宿日直の許可の際の条件を満たしている、という3条件を全て満たし、かつ、宿直は夜間に十分な睡眠を取り得るもの」と定義している。しかし残念ながら、“激務の宿直”というのはどこの病院でも常態化しており、しばしばTwitterでも医師のインフルエンサーがフォロワーに問題提起している。

これにはいくつか問題がある。もちろん適切に病院側が夜間報酬を支払うべきなのだろうが、赤字経営の病院が多い中、どうにか宿直ということでお願いできないかという経営陣の思いもある。地方に至っては、医師の人手不足は深刻である。僻地で働いている同級生は、完全に治外法権の労働体系で勤務している。家に帰ってきても昼夜問わず電話が鳴りっぱなしだそうだ。そして、現状の診療報酬はまだまだ低い水準にある(と筆者は思っている)。

つまるところ、お金の問題なのだ。お金がないから、末端にこうした“ひずみ”が生まれる。医療法人の存在そのものが営利目的ではないし、そもそも医療自体が儲かるビジネスモデルになっていない。一部の敏腕経営陣を有した病院だけが利益剰余金を積み増しできているだけで、多くの病院は何十年前からずっと自転車操業なのだ。医師の働き方改革を進めたところで、果たして根本にある問題は解決されるのだろうか?

倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS]

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