糞石,食餌中の異物やリンパ濾胞過形成などによる虫垂内腔の閉塞と,腸内細菌による二次感染が原因である。10~20歳代が好発年齢である。急性虫垂炎は,日常診療で遭遇する急性腹症の中で最も頻度が高い。かつては緊急開腹手術が標準治療であったが,画像診断技術の進歩,抗菌薬の有効性の向上,腹腔鏡下手術の普及により,治療方針が多様化している。
食欲不振,嘔気・嘔吐を伴うことが多い。腹痛が心窩部から始まり,次第に右下腹部に限局するのが典型的症状である。自発痛として右下腹部痛があることが重要で,圧痛だけでは疑わしい。病状の進行に伴い反跳痛や筋性防御が認められるが,典型的症状の発現率は50~60%程度である1)。
①血液検査:白血球数やCRP値の軽~中等度上昇がみられる。
②腹部X線検査:右下腹部にsentinel loop sign,糞石などが認められることがある。
③腹部超音波検査:虫垂の腫大,糞石などが観察される。虫垂の短軸径6mm以上を腫大とする。蜂窩織炎性では8mm以上,壊疽性では10mm以上の腫大がみられる2)。
④腹部造影CT検査:腹腔内全体の客観的で広範囲な画像が得られるため,非典型的な症例や,他の急性腹症との鑑別が必要な症例に有効である。
穿孔性虫垂炎や汎発性腹膜炎症例は緊急手術の適応であるが,非穿孔性虫垂炎の中には保存的治療が可能な症例もあり,手術適応は身体所見,血液学的検査および画像診断を総合して判断している。また,妊婦,高齢者では身体所見からの診断は困難な場合も多く,画像診断を適切に用いて穿孔性腹膜炎となる前に手術を行うことが重要である。
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