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偽性腸閉塞症(オジルビー症候群および慢性偽性腸閉塞症)/後天性巨大結腸症[私の治療]

No.5004 (2020年03月21日発行) P.43

土屋輝一郎 (東京医科歯科大学消化器内科准教授)

登録日: 2020-03-23

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  • 機械的な閉塞を伴わずに腸管の病的拡張をきたす疾患群である。オジルビー症候群(急性偽性腸閉塞症)は術後や感染症,心血管系イベント,全身疾患に続発して急性,亜急性に大腸が拡張する疾患である1)。慢性偽性腸閉塞症(chronic intestinal pseudo obstruction:CIPO)は閉塞機転がないにもかかわらず,慢性持続的に機械的イレウス様症状を呈する。小腸および大腸の蠕動運動低下による腸管拡張,腸液貯留を認める2)。後天性巨大結腸症は器質的異常を伴わずに慢性的に大腸が拡張し,腹部膨満や排便障害をきたす3)

    ▶診断のポイント

    オジルビー症候群では数時間から数日の急性・亜急性に進行する経過に留意する。腹部単純X線にて大腸に限局した著明な拡張を認める。腹部造影CTにて機械的閉塞がないことを確認する。脾弯曲より近位の腸管に拡張を呈することが多い。

    CIPO,後天性巨大結腸症では慢性(6カ月以上)の腹痛,腹部膨満,便秘(CIPOでは下痢の場合もある)を症状とし,著明な腸管の拡張を認める。CIPOでは小腸を含めた全消化管が拡張するのに対し,巨大結腸症では大腸のみ拡張する。腹部造影CTにて機械的閉塞がないことを確認する。腸管蠕動運動の評価には小腸のシネMRIが有用である。シネMRIにて小腸蠕動運動の低下を認めれば,CIPOと診断する4)。腸管蠕動運動の低下を認めない場合は,巨大結腸症と診断される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【オジルビー症候群】

    腸管虚血・穿孔など腹膜刺激症状の出現に十分に注意しながら治療を進める。内科的治療や内視鏡での減圧まで時間をかけずに行い,改善を認めない場合は手術を躊躇せずに行う。

    【慢性偽性腸閉塞症】

    基本的には対症療法となる。腹部膨満・便秘に対して下剤,消化管蠕動促進薬の投与を行う。栄養不良に対しては経口・経管にて栄養剤(エンシュア・リキッド®,エレンタール®など)の投与を行い,改善を認めない場合は中心静脈栄養を行う。また,脂肪便やビタミンB12・葉酸低下を伴う場合は小腸内細菌異常増殖(small intestinal bacterial overgrowth:SIBO)を疑い,抗菌薬を投与する。安易な腸管切除は避ける。急性増悪時にはネオスチグミンやエリスロマイシンが有効との報告もある。内科的治療に抵抗性の場合は,胃瘻造設による減圧チューブが有効である。

    【後天性巨大結腸症】

    基本的には対症療法となる。腹部膨満・便秘に対して下剤,消化管蠕動促進薬の投与を行う。刺激性下剤は無効もしくは増悪をきたすことがあり,使用に際しては十分に注意する。最近では上皮機能変容薬が有効との報告もある。患者ごとに症状を随時評価しながら,効果を認める薬剤を選定していくことが重要である。内科的治療に無効の場合や拡張した結腸の捻転を呈する場合は,外科的切除が必要となる。

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