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好酸球性膿疱性毛包炎(EPF,太藤病)[私の治療]

No.5002 (2020年03月07日発行) P.41

戸倉新樹 (浜松医科大学皮膚科学講座教授)

登録日: 2020-03-07

最終更新日: 2020-03-04

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  • 好酸球性膿疱性毛包炎(eosinophilic pustular folliculitis:EPF)は,太藤重夫らにより報告された疾患であり,顔面を中心に多発性丘疹・膿疱が癒合性局面を形成する疾患として提唱された1)。その病態として,毛包脂腺系からの好酸球遊走因子の産生や炎症性サイトカインの関与が示唆されてきた。EPFの皮疹部では,プロスタグランジン(prostaglandin:PG)合成酵素,特にPGD合成酵素の発現が顕著に増加している。好酸球は,PGD2やeotaxinに化学遊走を示すため,これらの因子の産生亢進がEPFの病変を形成すると考えられている2)
    全身的免疫状態として,Th1/Th2バランスの不均衡(Th2優位)に基づくインターロイキン(interleukin:IL)-4・IL-5などのTh2サイトカインによる好酸球増殖および機能促進が原因であると考えられている。

    ▶診断のポイント

    好発年齢は30~40歳代で,男性に多い。好発部位は,顔面,体幹であり,稀に四肢,掌蹠にも出現する。典型的には顔面に好発する瘙痒がある毛包一致性の紅色丘疹,または膿疱が環状または局面状に遠心性に拡大する。膿疱は無菌性である。環状皮疹の中心部は鱗屑と色素沈着を残して消退する。

    こうした古典型EPFの鑑別疾患としては,白癬,角層下膿疱症が挙げられる。掌蹠に出現した場合,多発性膿疱が皮疹の中心となるため,掌蹠膿疱症と酷似する。
    また,当初EPFと診断した患者が,徐々に皮膚リンパ腫に進行した症例も報告されており,長期の経過観察を必要とする場合がある3)

    古典型に加え,ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus:HIV)感染や造血系腫瘍など,免疫変調・抑制状態にEPFが出現することもある。この場合の皮疹の特徴としては,環状形態をとらずに,毛包一致性膿疱を呈することである。また,EPFは稀に乳児例も存在する。

    EPFの古典型はわが国あるいはアジア地域に多いが,HIV感染に伴う体幹の多発丘疹ないし膿疱は,海外から多く報告されている。
    病理組織学的には,毛包や付属器周囲の好酸球の浸潤,毛包壁の破壊を特徴とする。また,末梢血好酸球増多を伴うことが多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    EPFはTh2細胞の増加・活性化に基づく高IL-5発現を伴う疾患であり,それを是正するためにTh1細胞に偏重させる治療が有効である。そのため,インターフェロン-γの全身投与は有効であり過去に報告例をみるが,保険適用はない4)。そのため,PG産生を抑制するインドメタシン代替薬が中心的に使われる。また,保険適用はないがシクロスポリン内服も有効である。加えてジアフェニルスルホン(diaphenylsulfone:DDS,レクチゾール®)も好酸球抑制作用を期待して投与されることもある5)

    これらの内服薬に加えて,タクロリムス軟膏(プロトピック®軟膏,保険適用外)あるいはステロイド外用薬を併用することもあり,特にタクロリムス軟膏は有効であることが多い5)

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