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【識者の眼】「サプリメントによる健康被害を防ぐために関係省庁の連携を」相原忠彦

No.5000 (2020年02月22日発行) P.66

相原忠彦 (愛媛県医師会常任理事)

登録日: 2020-02-19

最終更新日: 2020-02-18

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近年、巷に「サプリ」という言葉が溢れている。新聞広告、テレビ、週刊誌、ネット等で多くの情報が飛び交い、誤った健康知識をまき散らしている。仄聞によれば安いものは売れないらしい。

外来でも患者から「サプリを飲んだ方が良いのか?」等の質問は多い。私は「サプリは食品であり、医薬品ではありません。嗜好品と言った方が良いです」と回答する。また、「肝炎などの副作用報告もある」とも説明する。

そもそも「サプリメント」という曖昧な用語が拡散されたのは、横文字に弱い国民性とサプリ発祥のアメリカによる規制緩和の外圧である。そのアメリカでもサプリの扱いについては過去大きな議論があり、法制化までされている。

日本では、特定保健用食品(トクホ)のみが効果や安全性について国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しているが、それ以外はほぼ放置に近い。

アメリカ食品医薬品局(FDA)は常にサプリの危険性を提唱してサプリ産業界と闘っている。FDAは製造工場への抜き打ち検査や消費者からのクレーム処理を行い、基準に達していない場合や許可時と異なった配合などに対しては、製品の販売停止・業務停止を執行できる権限がある。故に、アメリカの栄養補助食品は日本国内で生産される製品に比べると、公的にチェックされる機会が多い。それに対し、日本国内で製造される栄養補助食品は、事故が発生しない限り、製造・販売中止になる確率はきわめて低い。

大事なことはサプリなどの所謂「健康食品」における国民の健康被害を防ぐことである。サプリの過大広告に踊らされて、挙げ句の果てに健康被害を被っては元も子もない。国内産業として健康食品産業は黒字企業が多く、国は税収として魅力のようだが、医薬品の代替には成りようがない。 健康の維持には食生活を含めた生活態度の改善や運動の方がより有効であるとの報告は多い。

政府は2009年に、食品衛生法やJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)、健康増進法で規定していた食品表示制度の所管を厚生労働省等から消費者庁に移管したが、引き続き国民の健康被害を防ぐために関係各省との連携を含め、制度の精神を守る必要がある。

相原忠彦(愛媛県医師会常任理事)[健康食品]

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