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【識者の眼】「産業医のための新型コロナウイルス対策:一般企業でも『まん延期』の話をしよう」和田耕治

No.4999 (2020年02月15日発行) P.60

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-02-06

最終更新日: 2020-02-06

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そろそろ、この段階で、新型コロナウイルスの感染が国内の多数の地域で確認される「まん延期」となった場合の一般企業の対応として、手洗い等の職員個人の感染予防策に加えて、追加で検討すべき感染対策をご紹介します。

1. 自宅待機させるべき職員の基準

新型コロナウイルスは軽症者が多く、検査もインフルエンザのように簡易キットがあるわけではないので判断が難しくなりそうです。重症者で検査に至り新型コロナウイルスが陽性となった場合には、濃厚接触者は潜伏期間などを勘案して休みにするでしょうか。一方で、有給にするのか、それとも会社指示とするのかなどは2009年の新型インフルエンザ流行時と同様に議論になるところです。2009年は一時的に同居家族にインフルエンザ感染があった場合には職員の出勤を停止とした企業もありました。濃厚接触者は誰か、自宅待機の日数は何日なのかは悩ましいです。

また、くれぐれも企業として新型コロナウイルスの陰性証明や治癒証明などを医療機関に求めたりしないように、衛生委員会などで確認してください。

2. 時差出勤などの対応の実施

満員電車やバスの車中は感染者がいた場合には感染リスクがやや高くなります。満員電車やバスに乗車することを不安に思う職員もいるでしょう。今後、時差出勤やテレワークを許可するかどうかを考える必要があるかもしれません。これは事業所の近隣地域で感染が確認された場合、特に初期には必要となる対策かもしれません。ただ、実際にこの対策を行うには「この部署はいいけど、あの部署はだめ」という不公平感なども課題になりそうです。

3. 地域において流行を拡大させる事業の自粛や縮小

すでに感染者の出ている奈良県などでは、観光客の激減が報告されています。かつて、2009年の新型インフルエンザでは初期に流行が確認された神戸市では「神戸まつり」を中止にし、さらに学校の閉鎖が行われました。もし事業所のある地域で感染拡大が明らかになった場合に、こうした感染を拡大させるようなイベントなどの事業の中止ということも想定しておくことは必要です。また、学校の閉鎖があれば小さな子供がいる親は出勤できなくなる可能性もあります。

大事なことは、これらの措置を行うにしても「いつ止めるか」ということも考えて始めることです。また様々な副次的な影響も考慮して意思決定する必要があります。

【参考】

▶    和田耕治, 他:新型インフルエンザ発生時に企業に必要な感染対策に関する意思決定とそのための情報. 産衛誌. 2012;54:77-81.
[https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/54/2/54_wadai11005/_pdf/-char/ja]
 

(著者注:2020年2月6日朝の情報を基にしています) 

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルスに備える]

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