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【識者の眼】「新型コロナウイルス水際対策はこのままでいいのか、いつまでやるのか」和田耕治

No.4999 (2020年02月15日発行) P.58

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-02-05

最終更新日: 2020-02-05

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クルーズ船での検疫が話題になるなど水際対策への取材がヒートアップしています。おそらくテレビとしては取材しやすいのでしょう。2009年の新型インフルエンザ流行時の水際対策を超える対応になってきていますが、この対策をいつ緩和するのか考えないといけない時期です。

以下は2010年6月10日に厚生労働省の新型インフルエンザ(A/HlNl)対策総括会議で示された水際対策への教訓です。

①国は、ウイルスの病原性や症状の特徴、国内外での発生状況、諸外国における水際対策の情報等を踏まえ、専門家の意見を基に機動的に水際対策の縮小などの見直しが可能となるようにすべきである。
②水際対策の縮小などの判断が早期に可能となるよう、厚生労働省および国立感染症研究所は、海外における感染症発生動向の早期探知や発生国における感染状況等の情報収集・分析が可能となるような仕組みを構築することが必要である。
③入国者の健康監視については、検疫の効果や保健所の対応能力等も踏まえて効果的・効率的に実施できるよう、感染力だけでなく致死率等健康へのインパクト等を考慮しつつ、健康監視の対象者の範囲を必要最小限とするとともに、その中止の基準を明確にするなど、柔軟な対応を行えるような仕組みとすべきである。
④水際対策の効果については、検疫により感染拡大時期を遅らせる意義はあるとする意見はあるが、その有効性を証明する科学的根拠は明らかでないので、さらに知見を収集することが必要である。また、専門家などからの意見収集の機会を設けるべきである。
⑤「水際対策」との用語については、「侵入を完壁に防ぐための対策」との誤解を与えない観点から、その名称について検討しつつ、その役割について十分な周知が必要である。

日本も含めて、多くの国が今後水際対策をどのように緩和していくのかシナリオを考えなければなりません。おそらく緩和できるのは、日本国内で数百の症例が確認され、重症度なども確認されてからになるでしょう。しかし、現在は軽症例が多く、新型コロナウイルスの検査が身近な医療機関では実施できませんので確認が難しそうです。そのため、国内で感染が広がり、水際対策の効果が限定的と示唆されるのは、肺炎患者でコロナウイルスの検査が陽性とわかり、中国との関連がなかったという症例が出た時となるでしょう。

水際対策だけで医療者が疲弊することがないように適正なリソースの配分をお願いしたいところです。
(著者注:2020年2月5日までの情報を基にしています)

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス対策に備える]

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