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予防医学〈腹部大動脈瘤スクリーニング〉─プライマリケアにおける腹部大動脈瘤スクリーニングのエビデンス[プライマリ・ケアの理論と実践(50)]

No.4998 (2020年02月08日発行) P.10

日下伸明 (亀田総合病院救命救急センター)

登録日: 2020-02-06

最終更新日: 2020-02-05

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SUMMARY
わが国における腹部大動脈瘤に関するエビデンスは乏しい。欧米でのsystematic reviewやRCTなどを参考にすると,喫煙歴のある65~75歳の男性ではスクリーニングとして一度のみ腹部エコーを施行することが推奨されるが,喫煙歴のない成人や女性にとって腹部大動脈瘤スクリーニングは有益性が低いかもしれない。

KEYWORD
腹部大動脈瘤
定義は「大動脈径3cm以上」である。無症候性ではあるが,経過を放置して破裂すると致死的な疾患。リスクとして,高齢,男性,喫煙,家族歴,アテローム性動脈硬化などが挙げられる。


日下伸明(亀田総合病院救命救急センター)

PROFILE
埼玉医科大学卒業後,亀田総合病院,安房地域医療センター,亀田ファミリークリニック館山における初期臨床研修を経て,亀田総合病院救命救急センターに所属。現在,チーフレジデントを担っている。週に1回総合診療外来を行い,急性期から慢性期の外来診療を通して自分の思い描くGeneralistになるべく研鑽中。

POLICY・座右の銘
Change the world, Be happy.

症 例
68歳男性。先日,同年代の友人が腹部大血管の破裂で死亡し,自分にも同様のことが生じるのではないかと不安になったため受診した。生来健康で,既往や特記症状も認めない。喫煙歴は20歳の頃から1日20本ほど吸っている。喫煙歴のない63歳の妻もこの機会に同じ検査を受けてみたいと言っている。
診察医として,この2人にエビデンスのあるスクリーニングをどのように行っていくのがよいだろうか。

1 疫学とリスク

わが国における腹部大動脈瘤に関する全国統計や無作為化比較試験は存在しない。欧米の統計では,50歳以上の人口の約1.6~7.2%に腹部大動脈瘤を認める1)。米国では毎年約20万人が診断され,そのうち約1万5000人で破裂リスクが高いと言われている2)。破裂した場合,入院前に約59~83%が死亡するため,破裂前に介入することが重要である3)

男性は女性に比べると有病率が高く,男性は1.6~8.8%,女性は0.2~6.2%だった4)。年齢を経るごとに有病率が高くなるという報告もあり,65~69歳:4.8%,70~74歳:7.6%,75~78歳:9.7%,80~83歳:10.8%であった5)

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