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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症とスーパー・スプレッダー」矢吹 拓

No.4997 (2020年02月01日発行) P.57

矢吹 拓 (国立病院機構栃木医療センター内科医長)

登録日: 2020-01-23

最終更新日: 2020-01-23

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本稿を執筆している2020年1月21日現在、中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスによる感染者が断続的に報告されている。なかには重症者・死亡者も含まれており、日本国内でも中国から帰国した輸入感染者が確認されている。普段毒性が弱いとされているコロナウイルスが突然変異して猛威を振るう事態は、2002年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年の中東呼吸器症候群(MERS)に次いで3回目である。過去には動物を媒介した重症化と流行が確認されているが、今回も重症化リスクが懸念され、ヒト-ヒト感染の可能性が指摘されている。

ウイルスの流行時期に、感染を一気に蔓延させる要因のひとつがスーパー・スプレッダーである。スーパー・スプレッダーとは、病原体に感染したホストのうち、通常予測される以上の二次感染例を引き起こすホストのことである。例えば、保菌者として腸チフスを拡散した「腸チフスのメアリー」が有名で、彼女は家政婦として給仕した家族に腸チフスを感染させ、その生涯を通して50人前後の感染者や死者を出したという。「腸チフスのメアリー」は長期間にわたって感染を拡大させたが、単回の接触で多くの患者にウイルス感染を拡げてしまうホストもスーパー・スプレッダーである。例えば、韓国ではMERS感染の83.2%が5件のスーパー・スプレッダーから蔓延したとされている。スーパー・スプレッダーのリスク因子は明らかにはなっていないが、宿主・病原体・環境要因が関連しており、さらに宿主の行動が重要ではないかと推察されている。

感染源として個人が特定されることは、プライバシーや人権の問題はあるが、流行拡大が起きないためにも、スーパー・スプレッダーの特徴を明らかにすることは重要である。感染流行のいち早い収束を祈るばかりである。

矢吹 拓(国立病院機構栃木医療センター内科医長)[新型コロナウイルス感染]

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