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脳動脈瘤[私の治療]

No.4995 (2020年01月18日発行) P.42

齊藤延人 (東京大学医学部脳神経外科教授)

登録日: 2020-01-21

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  • 脳動脈瘤とは,脳動脈壁が風船状に膨隆している状態で,動脈瘤壁には内弾性板の消失や中膜平滑筋細胞の菲薄化や消失などがみられる。形状により,囊状動脈瘤と紡錘状動脈瘤があり,前者は血管分岐部に発生し,後者は分岐部に関係しない。成人では3%程度の人に発見され,女性にやや多い。破裂率は約1%である。脳動脈瘤が破裂すると,くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)となり,約1/3が死亡,1/3が自立生活不能になる。高血圧,喫煙,過度の飲酒が破裂の危険因子である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    脳動脈瘤があるだけでは基本的には無症状である。内頸動脈−後交通動脈分岐部動脈瘤や脳底動脈−上小脳動脈分岐部動脈瘤では,脳動脈瘤による動眼神経の圧迫により眼瞼下垂などの動眼神経麻痺で発症することがある。さらに大きな動脈瘤は,脳の圧迫による神経局在症状を呈することもある。

    【検査所見】

    無症状の動脈瘤は,脳ドックや頭痛の精査の目的でMRIやMRAを行い偶然みつかることが多い。よほど大きくない限り単純CTではわかりにくいが,3D-CT angiographyでは良好に描出される。治療計画を立てる場合には脳血管撮影を行うこともある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【破裂のリスクの評価】

    脳動脈瘤がみつかったら,まず破裂のリスクを評価する1)。動脈瘤のサイズと部位が重要である。小型の動脈瘤はほとんど破裂せず,サイズが大きくなるほど破裂しやすい。

    わが国の脳神経外科施設283施設が2001~04年4月に前向きに登録した未破裂脳動脈瘤悉皆調査(UCAS Japan)の結果では,年間破裂率は0.95%で,動脈瘤の大きさ,部位,形状(ブレブあり)が破裂に関連する因子であった2)

    GrevingらはUCAS Japanを含む6つの前向き試験のメタ解析を行い,5年間の破裂リスクを予測するPHASESスコアを開発した3)。このスコアでは,人種(日本人では欧米人の2.8倍),高血圧,年齢,サイズ,SAHの既往,部位(前大脳動脈,後交通動脈,後方循環)が,リスク因子となっている。

    また,UCAS Japanのデータをもとに日本人の未破裂脳動脈瘤の3年間の破裂リスク予測スコアがつくられている4)。このスコアシステムでは,年齢(70歳以上),性別(女性),高血圧,大きさ(大きいほどリスク高),部位(前交通動脈や後交通動脈でリスクが高い),ブレブあり,をリスク因子としてスコア化される。

    【手術の方法とその選択】

    クリッピング術:全身麻酔下に開頭術を行い,顕微鏡手術で脳動脈瘤を露出し,チタンでできた専用のクリップを用いて脳動脈瘤の頸部を閉塞する。

    血管内治療:脳動脈瘤のコイル塞栓術とフローダイバーターによる治療などがある。前者では脳動脈瘤内にマイクロカテーテルを進め,コイルで内部を塞栓する。自己拡張型の袋状の塞栓デバイスなど新しいデバイスも出てきている。

    治療法の選択:最近では,脳底動脈先端部動脈瘤など後頭蓋窩の動脈瘤は血管内治療で治療されることが多い。一方で,中大脳動脈瘤など脳の表面に近い部位の動脈瘤は開頭術が選択されることが多い。海綿静脈洞から頭蓋内内頸動脈の大型動脈瘤に対しては,フローダイバーターによる治療が適応となる。そのほか,複雑な脳動脈瘤に対してはバイパス手術を併用した治療も行われる。

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